【年末用】コタツで一緒に年末を

概要

浜中健斗のアパートで、年末の同期会をやる予定だったが、ふたりだけで過ごす12月31日になってしまった。

キャスト

由希:松坂由希(まつざかゆき)社会人。健斗は同期。
健斗:浜中健斗(はまなかけんと)社会人。由希と同期。

本編

***

*由希がこたつに座っている。
*健斗は台所でなにかしている。

由希:紅白終わっちゃったね~。
健斗:(台所から呼びかけて)
健斗:だねぇ~。
健斗:松坂ぁ?
由希:なに?
健斗:お湯沸いたけど、あったかいスープとか飲む?
由希:あ、欲しい。
健斗:コーンスープと、ポタージュと、かぼちゃのがあるけど?
由希:かぼちゃかなぁ?
健斗:俺は……ポタージュにでもすっかなぁ。
由希:なにからなにまですいませんねぇ。
健斗:ホントだよ。
由希:いつもいつもすいませんねぇ。
健斗:ホントだよ。
由希:今日もぜーんぶおいしゅうございました。
健斗:お粗末様でした。
由希:あ~、もうすっかり、
由希:健斗に胃袋つかまれちゃってるもんなぁ。
健斗:おくちに合ってなによりですよ。
由希:健斗さん、お嫁に来ませんか?
健斗:木のスプーンと普通のスプーンどっちがいい?
由希:そっち。
健斗:はい。
健斗:熱いから気を付けてね。
由希:ありがと、ママ。
健斗:(座る健斗)
健斗:よっこいしょ。
健斗:ママちゃうわ。
由希:あー、あったまるぅ。
健斗:あぁ、うまい。
由希:コタツに座って、スープを頂いて。
由希:はぁ~、幸せだわぁ。
由希:コタツってなんでこんなにあったかいんですかねぇ。
健斗:コタツだからだよ。
由希:畳の部屋いいなぁ。
健斗:よかったじゃん、松坂の部屋フローリングで。
由希:えーなんで?
健斗:コタツだと動かなくなるだろ?
由希:そーなんですよーねーーー。
由希:今年も、ここでいっぱい鍋したねぇ~。
健斗:そうだなぁ。
由希:年末もさ、
由希:今年も本社の同期で集まって、
由希:みんなで一緒に年越しできると思ったのになぁ。
健斗:結局、山田も岡野も帰省したし。
由希:私も迷ったけど……
由希:健斗の天ぷらで年越しそば食べたかったし。
由希:買出しからなにからなにまですいませんねぇ。
健斗:ホントだよ。
由希:ねぇ?健斗?
健斗:ん?
由希:アタシと一緒に年越しできてうれしい?
健斗:大丈夫だよ、お雑煮もあるからね。
由希:ねぇ?うれしい?
健斗:お餅も、いっぱい買ってあるからね。
由希:(ため息)
由希:もう、そうやって。
健斗:お雑煮、食べないの?
由希:食・べ・ま・す。
健斗:食欲って実体を持ったら、松坂みたいなんだろうな。
由希:なにそれ。
健斗:で?
健斗:目標は達成したの?
由希:(ため息)
由希:それ聞く?
健斗:聞くねぇ。
健斗:年末も年末だからねぇ。
健斗:今年の一年間を振り返るべきだろうね。
由希:(ため息)
由希:あとちょっとがなぁ。
由希:痩せなかったなぁ……アタシ。
由希:ダイエットがなぁ。
健斗:なんだよ、その目は。
由希:……。
健斗:にらむなよ。
健斗:え?俺?俺が悪いの?
由希:諸悪の根源。
健斗:なんでだよ。
由希:おいしいのがわるい。
健斗:おかわりしなければいいだろ?
健斗:俺は別に体重増えなかったよ?
由希:だってぇ……。
由希:おいしいじゃん。
健斗:ならよかったじゃん。
由希:そういう健斗は?
由希:今年、どうだったの?
健斗:ん~、資格もとれなかったしなぁ。
健斗:あともうちょっとだったんだけどなぁ。
由希:あぁ、秋に受けるって言ってたやつ?
健斗:うん。ダメだった。
由希:あともうちょっとなら、来年だね。
健斗:めんどくせぇなぁ~。
由希:とか言って、真面目にやるんでしょ?
健斗:来年はがんばるかなぁ。
健斗:あ~、どっか行きてぇなぁ。
由希:温泉行きたい。
健斗:あー、行きたい。
由希:今年、温泉行けなかったな~。
健斗:来年はいけるかな~。
由希:一緒に行く?
健斗:あ~、みんなで?
由希:う、うん。
健斗:レンタカー借りて、日帰りとか、
健斗:金曜日の夜とかでもいいよなぁ。
由希:……そうだねぇ。
健斗:道の駅とかで、うまいもの買って帰って来て。
由希:それいいですね!
健斗:松坂、食うことばっかり!
由希:えー、健斗が言うからじゃん。
健斗:あはははは
由希:あ、おいしいお野菜いっぱい買ってくればいいのよ。
由希:そしたら、おいしく健康な食生活が待っている!
健斗:つくるの俺じゃん?
由希:うん。食べる係やります。
健斗:あ~、でも、食べて、健康的なバランスなら……
由希:……
健斗:なんだよ、その目は
由希:そんなことが可能なのですか?総料理長?
健斗:野菜嫌いじゃないじゃん?
由希:うん。
健斗:っていうか、そんな気にする必要ないんじゃないの?
由希:ダメなの、脱ぐとねぇ、すごいの。
由希:このパーカーの下にね、
健斗:どれ?
由希:えっとねぇ、ってバーカ。
健斗:来年は、健康レシピを目標にしようかなぁ。
由希:いいですね!
由希:便乗させていただきます!
健斗:なんでだよ。
由希:『同期のよしみ』じゃないっすかぁ。
健斗:そんなに食いたいの?
由希:もうね、あなた無しでは生きていけないかもしれない。
健斗:おおげさだな。
由希:もう、健斗の料理と、
由希:こたつがあれば、
由希:アタシは幸せです。
健斗:こたつでグデ~って、
健斗:煮とけたじゃがいもみたいになってるから
健斗:アレだけど、
健斗:言ってること、告白みたいになってるからな?
由希:うん。
由希:告白。
由希:もう、コクっちゃう。
由希:アタシ、あなた無しでは、
由希:生きていけないのー。
健斗:(コタツを切ろうとする)
健斗:カチッ。
由希:あー?健斗さん?
由希:あーー、いけません、
由希:コタツのー、スイッチをー切ってはー
由希:あーー、いけません。
健斗:はい、「カチッ」
由希:あーー、あたたかーい。
由希:あなたはー、
由希:わたしをー
由希:殺す気ですねぇー。
健斗:(コタツを切る)
健斗:カチッ。
由希:あー!健斗さん!
由希:あーー、いけません、
由希:コタツのー、スイッチをー切ってはー
由希:あーー、いけません。
健斗:「カチッ」
由希:あーー、あたたかーい。
由希:あなたはー、
由希:わたしをー、
由希:弱めつけてー、
由希:どうにかしてしまう気ですねー。
健斗:どうにかってなんだよ。
由希:健斗のえっち。
健斗:ぐったりした何かがなんか言ってる。
由希:っていうかさー、
由希:今年できなかったことばっかり思いつくね。
健斗:できなかったことばっかりだよ。
由希:仕事ばっかりだったなー。
健斗:彼女もできなかったし。
由希:え?彼女ほしいの?
由希:っていうか、彼女つくる気あったの?
健斗:あるよ。
由希:えー。
健斗:なんだよ。
由希:ぜったいウソ。
健斗:なんでだよ。
由希:だって、ぜんぜんそんな気なさそうじゃんか。
健斗:無くはないよ。
由希:……。
健斗:なんだよ、その目は。
由希:好きな人とかいるの?
健斗:いるよ?
由希:えーー。
健斗:えーーってなんだよ。
由希:好きな人いるとかウソっぽい。
健斗:まぁ、告白もできなかったし。
由希:えー?!
由希:あーでも、そっか。
由希:だから、彼女いないんだもんね。
健斗:来年は告白でもすっかなぁ。
由希:なんか軽ぅ。
健斗:俺も、ちゃんとするときは、ちゃんとするから。
由希:……。
健斗:なんだよ、その目は。
由希:ちなみに、なんて言うの?
健斗:なにが?
由希:告白するとき。
健斗:ん~、それ難しいよな。
由希:なんて言うのか、考えといたほうがいいよ?
健斗:え、じゃあ、なんて言われたい?
健斗:女子代表として。
由希:えー、ん~、女子代表としてはですねぇ~。
健斗:うん。
由希:ん~、やっぱり、ストレートに、
由希:「好きだよ」かなぁ。
健斗:「好きだよ」
由希:それだけ言ってもダメだからね?
健斗:どゆこと?
由希:ちゃんと、名前を言って、
由希:なんとかさん、好きだよ。って
健斗:なんとかさん、好きだよ。
由希:あー、でも、好きだよだけだと、
由希:「はぁ、そうですか。で?」ってなるかも。
健斗:なんかつけたほうがいいの?
由希:うん、付けたほうがいいと思う。
由希:「付き合ってください」とか
由希:「彼女になってください」とか。
健斗:え、じゃあ、
健斗:「松坂さん、好きです、付き合ってください」
健斗:とか?
由希:うんうん、そうそう。
由希:ただなぁ、やっぱりいきなり言われても、
由希:ごめんなさい。
由希:ってなるのがオチだから、
由希:ちゃんと関係性を築いて、
由希:距離感をしっかりとつめて、
由希:ふたりきりになっても、
由希:変な感じにならないような状況にしないと、
由希:やっぱり、乙女心は
由希:(あくびをする)
由希:攻略できませんよ。
健斗:そっかぁ。
健斗:(やや棒読み)
健斗:「松坂さん、好きです、付き合ってください」
由希:ん~、なんか、ぐっとこない。
由希:なんでだろ?
健斗:じゃあ……試しに、
健斗:あ、まっすぐ向いてみて
健斗:ちょっとかしこまった感じで。
由希:え、あ、うん。
健斗:(真面目に)
健斗:「松坂さん、ちょっと大事な話があってさ、
由希:あ、はい、なんですか?
健斗:「由希、
健斗: 俺、由希のこと好きなんだ、
健斗: 俺と付き合ってください」
由希:………。
健斗:………。
由希:いいかも。
由希:ぐっときた。
健斗:よかった。これで、なんとかなるな。
由希:来年はさ、
由希:健斗に、彼女できるといいね。
健斗:うん、彼女できるといいなぁ。
由希:あ、そうだ、健斗さ?
由希:今年達成できたこととかないの?
健斗:達成できたこと?
健斗:とりあえず、月次の営業目標は、
健斗:第3四半期はクリアできた、かな。
由希:あー、そうだったね。
健斗:あと、筋トレ継続。とか。
健斗:松坂は?
由希:いちおう、筋トレは続けてた。
健斗:えらいじゃん。
由希:達成できたこと増やしたいなぁ。
健斗:あ、あと1つ、達成できたことあったわ。
由希:なに?
健斗:好きな人に告白すること。
由希:え?
由希:さっき、できなかったって言ってたじゃん。
健斗:ん? いや、今、したし。
由希:は?
健斗:………。
由希:………。
健斗:………。
由希:………。
健斗:………。
由希:………え?いや、え?
健斗:あははははは
由希:か、からかってるだけでしょ?
健斗:なんだよ、顔真っ赤にして。
由希:うっさいうっさい。
由希:バカな冗談言ってないでさ、
由希:さっき練習したんだから、
由希:来年は、ちゃんと告白して、
由希:ちゃんとした彼女つくりなよ?
健斗:ちゃんとしたってなんだよ。
由希:もう、ほら、もうすぐカウントダウン始まるよ?
健斗:お、もうすぐじゃん。
由希:今年も終わるね。
健斗:なんか、あっという間だね。
由希:今年もお世話になりました。
健斗:そうですね、今年もお世話しましたね。
由希:おいしいものをたくさん、
由希:来年もよろしくお願いいたします。
健斗:はいはい。しかたねーな。
由希:10
健斗:9
由希:8
健斗:7
由希:6
健斗:5
由希:4
健斗:3
由希:2
健斗:1
由希:はっぴーにゅーーいやーーー!
健斗:あけましておめでとうございます。
由希:あけましておめでとうございます。
由希:今年もよろしくお願いします。
健斗:今年もよろしくお願いします。
健斗:あのさ、
健斗:由希、
由希:は、はい?
健斗:俺、由希のこと好きです。
由希:……、
健斗:俺と付き合ってください。
由希:……え?
健斗:俺の彼女になってよ。
由希:え?
健斗:ダメ?
由希:アタシが?
健斗:うん。
由希:健斗の?彼女?
健斗:うん。
由希:本気で言ってる?
健斗:うん、本気。
由希:冗談抜きで?
健斗:うん。冗談抜きで。
由希:………
由希:………(ため息)
由希:………ずるいよ。
健斗:……ダメ?
由希:(涙ぐんで)
由希:………だって、
健斗:なんだよ、泣くなよ。
由希:さっきさ、好きな人いるって聞いてさ、
由希:こうやって、健斗の部屋で、
由希:一緒にお酒飲んだり、ゲームしたり、
由希:晩御飯食べるのも今日で最後かな、とか、
由希:本気で思ってたんだから。
健斗:俺は、来年も、
健斗:いや、今年も、
健斗:これからも、由希と一緒に居たいって思ったから。
由希:(ため息)
由希:はーあ、
由希:ホントにアタシでいいの?
由希:なんにもいいところ無いよ?
健斗:あはははは
健斗:はい、タオル。
由希:もーー、ずるいよ。
由希:アタシなんか彼女にしたって、
由希:なにもいいことなんて無いよ。
健斗:悪口言うなよ、俺の好きな人のこと。
由希:(ため息)
健斗:返事は?
由希:はい。
健斗:はい、じゃなくて。
由希:よろしくお願いします。
健斗:さっき練習したじゃん。
由希:え?
健斗:ちゃんと言ってほしいな。
由希:私も好きです。
健斗:あー、なんかちがう。
由希:え? ちがうって?
健斗:ちゃんと名前言って、
健斗:好きだよだけだと、
健斗:「はぁ、そうですか。で?」
健斗:ってなるかもって言ってたじゃん、
健斗:ね?
由希:そ、そうですね。
由希:言いました。
健斗:返事は?
由希:私も、健斗のこと好きです。
健斗:それから?
由希:えー、いいじゃん。
由希:健斗が言ったからいいじゃん。
健斗:由希。
健斗:好きだよ。
健斗:俺の彼女になってください。
由希:はい。
健斗:はい、だけじゃダメだって。
由希:えー、無理だよ。
健斗:無理じゃない。
由希:言うの?
健斗:うん。
由希:私も、健斗のことが好きです。
由希:アタシの彼氏になってください。
健斗:いいの?
由希:良いって言ってる!
健斗:じゃあ、今年は、ふたりで温泉でも行こっか?
由希:うん。行くー!


おわり

あとがき

2021/12/31.