御台本

御台本 - Written by oda

愛と煙草と後輩と
【登場人物】 【●性別】 【登場人物の概要】
真琴 女性 後藤真琴(ごとうまこと)。大学4年生。誰にも言えない恋心を抱えている。
山岡 男性 山岡浩司(やまおかこうじ)。大学4年生。一度消したはずの恋心がくすぶっている。

あらすじ

サークルの仲間との宅呑みの準備。
時計の針が23時をまわったころ。
買出しに行った後輩をベランダで待つのは、あなたと私のふたり。

愛と煙草と後輩と

【真琴の家。マンションのベランダにて】
(ベランダで煙草をふかしている)
(近所迷惑にならないように、やや小声で話している)
山岡:(タバコをふかす)
真琴:こうじ?あ、いた。
山岡:ん?
真琴:ベランダにいるならいるって言ってよ。
山岡:わりぃ。
真琴:今、駅で合流したって、田村ちゃんと信也(しんや)くん。
山岡:こんな時間まで、大変だな。
真琴:タバコ、やめるんじゃなかったの?
山岡:ここのベランダの灰皿まだ置いてんじゃん。
真琴:アタシが吸うの。
山岡:まことこそ、やめたんじゃなかったのかよ。
真琴:さぁね。火、貸して。
山岡:ん。
真琴:(呼吸・ため息交じりの吐き出し)
山岡:(ため息)
山岡:なんか、あっという間だな。
山岡:もう、2月だなんてな。
真琴:そう?
山岡:うん。
真琴:アタシはやっと終わる。この大学生活。
山岡:わるかったよ。
真琴:なにが?
山岡:(タバコの煙をはく)
真琴:あの時は、あれでよかったじゃん?別に。
山岡:……わるかった。
真琴:聞き飽きたからいらない。
山岡:……。
真琴:あーあ、長かったなぁ。この1年。
山岡:今年?
山岡:4年生になってから?
真琴:(ため息)……うん。
山岡:好きなら好きって言えば良かったんじゃねぇの?
山岡:ふたりきりになったタイミングなんて
山岡:いくらでもあったろ。
真琴:……。
山岡:みそ汁なんかつくってないでさ。
真琴:狸寝入りがなんか言ってる。
山岡:なんで?
真琴:なんで?って?
山岡:らしくねぇな。
真琴:(ため息)だって、
真琴:気づいてくれないんだもん。
山岡:言ってもまだ、高校4年生だぞ?
真琴:じゃあ、なに?
真琴:ゴールデンウィークまでに
真琴:食べちゃえばよかったってこと?
真琴:誰かさんみたいに。
山岡:わかるだろ、信也の性格くらい。
真琴:真面目で、臆病で、優しすぎる。
山岡:なんで?
真琴:なんでだろ。アタシにもわかんない。
真琴:でもさ……。
山岡:でも?
真琴:あの子のさ、
山岡:うん?
真琴:大学生活ってさ、まだまだじゃん?
山岡:まぁな。
真琴:アタシたちはさ、好き勝手やって
真琴:4年間生きてきて。
真琴:なのにさ?
真琴:奪える?
山岡:好きなんだろ?
真琴:なんか冷静になっちゃってさ。
真琴:アタシ、来年いないわけよ。
真琴:大学5年生なんかまっぴら。
真琴:無事、第3志望の会社に拾ってもらって。
真琴:なのにさ?
真琴:奪える?
真琴:彼女って立場、名乗って、
真琴:あの子の自由な大学生活、
真琴:奪える?
山岡:……。
真琴:アタシには無理。
真琴:だから、アタシからは言わない。
真琴:言えないよ。
山岡:後悔するぞ?
真琴:後悔してんの?
山岡:まだ、許してもらえるなら。
真琴:(ため息)
真琴:浩司も一緒じゃんか?
真琴:なんで手ださないの?
山岡:あいつは……。
真琴:そういうんじゃないってまた言うの?
山岡:壊せないよ。
真琴:壊れてないよ?アタシは。
山岡:……だけど……
真琴:結局、生理遅れてただけだったし。
真琴:できてもないし、おろしてもないし。
真琴:たぶん、風邪っぽかったのと、
真琴:ん~初めてだったからじゃない?
山岡:だけど、俺は逃げた。
真琴:まぁね、
真琴:しっぽ巻いて逃げるって
真琴:ああいうことを言うのかなって思った。
山岡:ごめん。
真琴:ねぇ?そのごめんにも飽きたからさ、もうネタにしない?
山岡:なぁ?真琴?
山岡:卒業する前にきいていい?
真琴:なに?
山岡:なんで、俺とつるんでくれてたわけ?
山岡:このサークル、立ち上げからずっと……
真琴:だって、アタシのつくったコミュニティじゃないもん。
山岡:真琴を慕ってるヤツもいる。
真琴:浩司のまわりに人が集まってきてるの。
真琴:アタシはただ、見てただけ。
真琴:(ため息)
山岡:こんなひどい男に?
真琴:ひどい?
山岡:ひどい男だろ。俺なんか。
真琴:サイテー、弱虫、チキン野郎、馬糞以下、虫けら、あ、虫にも失礼。
山岡:……そうだろ、やっぱり。
真琴:そんな風にアタシが思ってるって思ってたの?
山岡:……ちがうのかよ。
真琴:悪いけど、アタシは後悔してないよ?
真琴:あなただったこと。
山岡:え?
真琴:だって、言ってもまだ、高校4年生だっただけじゃん?
山岡:だけど……
真琴:本能がさ、あの時は、まだ、育ってなかったのかもしれないけど。
山岡:本能?
真琴:シたい。って思ったってこと。
真琴:怖いけど、怖かったけど
真琴:許せたんだもん、あの日は。
山岡:真琴……。
真琴:それに『来ないんだけど』って言われて
真琴:しっぽ巻いて逃げだしたヤツが、
真琴:どんな恋愛すんのかな?って。
真琴:興味あっただけ。
山岡:監視役かよ。
真琴:にしても、3年間でとっかえひっかえ。
山岡:なんだよ。
真琴:フられすぎ。ダサっ。
山岡:うるせぇよ。
山岡:お前だって、
真琴:うん。アタシも楽しんだよ。
真琴:浩司に彼女ができるから。
山岡:なんだよそれ。
真琴:カラオケ誘っても来ないのそっちじゃん。
山岡:お前なぁ。
真琴:なんで?
山岡:怖かったんだよ。真琴を傷つけるのが。
山岡:自分に歯止めがきかなくなったらどうしようって。
真琴:ほかの女子には手だしたのに?
山岡:まぁ、それは。付き合うことになったわけだし。
真琴:アタシは付き合ってなかったから?
山岡:いや。
真琴:付き合ってたら、
真琴:『まだ、結婚できない』じゃなくて、
真琴:『卒業したら結婚しよう』だったの?
山岡:……。
真琴:(茶化して)
真琴:ねぇえ?山岡さーん?
真琴:山岡浩司さーん?どっちぃ?
山岡:……迎えに行こうと思ってる。
真琴:田村ちゃんと信也は道わかるよ。
山岡:茶化すなよ。
真琴:え?
山岡:社会人1年目乗り切ったら、真琴のこと迎えに行こうと思ってる。
真琴:……。
山岡:俺は、本気だ。
真琴:……。
山岡:……。
真琴:熱でもあんじゃないの?
真琴:ベランダに突っ立ってたから
真琴:風邪でもひいた?
山岡:一年後の、4月29日に、迎えに行く。
真琴:……。
山岡:プロポーズする。
真琴:(ため息)浩司?今返事しなきゃいけない?それ?
山岡:いや、これだけは冗談じゃなく。
山岡:俺の気持ち。
山岡:知っといてほしかったから。
山岡:ごめん。
真琴:ねぇ?
真琴:謝んの、無しにしようよ、嫌だよもう。
真琴:ずーっと謝んじゃん?
真琴:ずーっと。ずーっと。
山岡:それも、自分にケリつけてくる。
山岡:俺、がんばるから。
真琴:(ため息)浩司が勘違いはなはだしいから言っとくね。
真琴:アタシさ、浩司のこと好きだよ。
真琴:彼女ができる度に、ムカつくし。
真琴:別れる度に、ざまぁみろって思ってた。
真琴:音痴なあんたの失恋ソング、一般市民が朝まで付き合えるわけないじゃん。
山岡:……真琴。
真琴:だけど、もし、あの子に告白してもらえたら、
真琴:何年待っても、
真琴:アタシ、迷わずあっち行くから。
山岡:……わかった。
真琴:(電話が鳴る)
真琴:あ、信也。
真琴:もしもし?
真琴:ベランダ?
真琴:うん、ベランダにいるよ?下?
真琴:(ベランダから下を見下ろす)
山岡:あ。
真琴:寒いから早く上がっておいでって、
真琴:……信也、アタシ待ってるから。
真琴:(電話をきる)
山岡:真琴は、待ってるだけでいいの?
真琴:早く上がってくればいいのに、
真琴:まだ手、振ってるよ?
山岡:俺にじゃねぇよ。
真琴:田村ちゃんのほう。
山岡:信也は、真琴を見てるのにな。
真琴:田村ちゃんだって、浩司を見てる。
山岡:俺、真琴にフられた?
真琴:まだ、フってない。
真琴:1年後の4月29日に来るんでしょ?
山岡:とりあえず、がんばるわ。
真琴:会社ブラックじゃないといいね。
山岡:どーせブラックだよ、社会人なんて。
真琴:ねぇ?浩司?
真琴:運命って信じる?
山岡:運命か。
山岡:運命って言ったって、
山岡:そんなきれいなもんじゃねぇよ、きっと。
山岡:吸い込んだら真っ黒になっちまうんじゃね?
真琴:タバコみたいに?
山岡:そう。この煙みたいに、
山岡:不確かすぎてすぐに消えちまう。
真琴:タバコやめようかな。
山岡:俺もやめようかな。
真琴:やめられるの?
山岡:やめたい。
真琴:じゃあ、愛は?あるの?信じる?
山岡:さぁな、俺が知りたい。


*** おわり ***



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