御台本

御台本 - Written by oda

あきらめかけた思いの先に
【登場人物】 【●性別】 【登場人物の概要】
ドニィ 男性 冒険の旅の途中。薬草売りを生業にしている。日本語での発音は「ドニー」に近い。
フラティル 女性 冒険の旅の途中。果物売りを生業にしている。日本語での発音は「フラティール」に近い。

あらすじ

冒険の旅の途中。確かめあった大切な思いとは。
※「あきらめられない思いの先に」「あきらめたはずの思いの先に」のお話をもとにファンタジーバージョンとして創作しました。

このお話は、ノベルニアプロジェクトに参加しています。

あきらめかけた思いの先に ver.2023.05.14

【街はずれ 待ち合わせ】
フラティール:ドニィー!ドニィー!
ドニィ:ったく、そんな走んなくても
フラティール:ごめん、遅くなっちゃって。ドニィ、待たせたでしょ?
ドニィ:いや、ぜんぜん。俺もさっき……
フラティール:(にらむ)
ドニィ:……なんだよ
フラティール:すーぐそうやってウソつく
ドニィ:嘘なんてついて……ないよ
フラティール:ホントに?
ドニィ:まぁ、ちょっとは待ったけど
フラティール:ほらー、
ドニィ:けど、そんなに長い時間は待ってないよ。
フラティール:はい!これ
ドニィ:どしたの?
フラティール:アタシのこと、待ってくれたお礼。
ドニィ:いや、お礼とかいいよ。
フラティール:ちがうの、美味しそうだから買ってきた。
ドニィ:そか、ありがと。
フラティール:ごめん、ちょっと2つ持ってて。
ドニィ:うん。
フラティール:ルーキッドの実も買えたし、野ベルベリーも買えたし。
ドニィ:荷物持とうか?
フラティール:ううん、大丈夫。明日、ルローの村で渡す分だから。これでよし。入った入った。さ、行こ。
ドニィ:はい、これ。
フラティール:あ、一本はあげる。ドニィのだよ。
ドニィ:なに?これ?この瓶。
フラティール:プリミエルって書いてあるよ。飲むでしょ?
ドニィ:いや、お酒はいいよ。まだ、夕方までもう少し歩いておきたいし。
フラティール:あ、やっぱり知ってたんだ?
ドニィ:知ってたって?
フラティール:プリミエルってお酒。
ドニィ:ん~、まぁ、厳密にいえばお酒の名前じゃないけどな。
フラティール:あ、そうなの?
ドニィ:高かったんじゃないの?
フラティール:ううん。お酒じゃないの。あまーい、ジュース。
ドニィ:あ、ジュース?
フラティール:旅の疲れをいやす味。だってさ。
ドニィ:いつ飲もうかな。
フラティール:冷たいほうが美味しいって。歩きながら飲もうよ。
ドニィ:へぇ~、なんかきれいな瓶だなぁ。
フラティール:でしょ? スピケルの市場のおじさんも言ってたけど、
ドニィ:うん?
フラティール:『幸運を運ぶお酒の味を再現してあるよ』って
ドニィ:幸運を運ぶお酒?
フラティール:『誰も飲んだことのない、幻のお酒の味がするよ』って
ドニィ:いい加減だなぁ
フラティール:でしょ?
ドニィ:うん
フラティール:だから聞いたの。『誰も飲んでないのに、幻の味がわかるの?』って
ドニィ:おじさん、なんて言ってた?
フラティール:『お嬢ちゃん、秘密だよ? おじさんは飲んだことあるんだ』だって
ドニィ:一番怪しいやつじゃん。
フラティール:でしょー
ドニィ:やっばい味かもな
フラティール:あ、でも美味しいよ
ドニィ:飲んだの?
フラティール:ちょっとだけ、お試しで飲んできた。
ドニィ:じゃあ、頂きます
フラティール:どうぞどうぞ
ドニィ:あ、美味しいかもこれ。けっこう好きかも。
フラティール:よかった。
ドニィ:開けらんない?
フラティール:うん。
ドニィ:ちょっと持ってて。かして、(力をこめてあける)…………よっと。どうぞ
フラティール:ありがと、ドニィ。かんぱーい
ドニィ:どしたの?ご機嫌だね
フラティール:べつに~。
ドニィ:なにニヤニヤしてんだよ。
フラティール:幸運の味。
ドニィ:えらくお気に入りだな。
フラティール:うん。
ドニィ:でもさー、ハーシーとフィジー、親のところへあいさつに行くことになるって思わなかったな
フラティール:だよね~。
ドニィ:旅の途中はあんなにケンカしまくってたのにさ
フラティール:えー、でも、あのふたりは最初っからあんな感じだったじゃん。
ドニィ:まぁな。
フラティール:今日、お兄さん夫婦にも会うって。
ドニィ:よかったのかよ?
フラティール:なにが?あ!ドニィ!ここからの景色最高だよ!スピケルの港があーんなに小さく見える。
ドニィ:……
フラティール:あ、あそこの赤い屋根、フィジーん家かな?
ドニィ:……
フラティール:時計塔があそこだから、間違いないよ!
ドニィ:……よかったのか?
フラティール:なにが?
ドニィ:スピケルに居れば、フィジーん家でおいしいものいっぱい食べられただろうに。
フラティール:まぁ、確かに?けど、いいの。さ、行くよ。
ドニィ:ホントによかったのか?
フラティール:あ、テポの花咲いてるよ。見て!見て!
ドニィ:俺はルローの村にこの薬草を届ける用事があったけど、フラティールはスピケルから出てる船に乗って、あとから3人で合流してもよかったんだぜ?
フラティール:ドニィ?
ドニィ:なに?
フラティール:この旅は、アタシの旅でもあるの。アタシは、果実売りとして、スピケルで買い込んで、ルローの村に行くルートに決めたの。
ドニィ:そうだけど……野宿と山越え。無理しなくてもよかったんじゃないか?
フラティール:あ、もしかして心配してくれてる?
ドニィ:まぁ、少しは?
フラティール:じゃあ、先を急ご。おいてくわよ?
ドニィ:はいはい

 ***
【峠。頂上付近。湧き水のほとりで】
ドニィ:フラティール!湧き水があったぞ!あともう少し!
フラティール:うん。
ドニィ:(湧き水を飲んで)ぷはーーーー!生き返る!
フラティール:ドニィ、荷物持たせてごめん
ドニィ:とりあえず、そこの水飲んで、このスピルアの木の近くで夜を明かそう。
フラティール:(湧き水を飲んで)ぷはーーーー!生き返る!
ドニィ:フラティール?大丈夫か?
フラティール:うん。生き返った。
ドニィ:よかった。荷物、置いとくぞ
フラティール:うん。
ドニィ:とりあえず、ここで火を焚こう。
フラティール:うん。
ドニィ:あとで追加の枝は拾ってくればいいだろ。
フラティール:うん。
ドニィ:そんな顔すんなって
フラティール:うん。
ドニィ:足引っ張った。とか思ってんだろ?
フラティール:うん、ちょっとね
ドニィ:いいのいいの。こういうのも、ひとり旅じゃ味わえないんだから。
フラティール:うん。
ドニィ:俺のカバンの外に敷く物丸まってるから、
フラティール:これ?
ドニィ:広げて敷いちゃって。
フラティール:うん。
ドニィ:あ、そうだ、ルズトリィのシチューのつくりかた教えてよ。
フラティール:アタシの鍋出そうか?
ドニィ:いや、俺ので作りたい。
フラティール:じゃあ、アタシので水わかすね。
ドニィ:鍋、かして、水くんでくる。
フラティール:あ、でも
ドニィ:いいのいいの、水すぐそこだから、フラティールは座ってなって
フラティール:うん。ありがと。
ドニィ:さてと。どうやってつくるんだっけ?
フラティール:まずは、ルズトリィの茎を薄く剥いていくの。繊維質だから、ナイフでちょっとやっちゃえば、ほら
ドニィ:あ、ほんとだ
フラティール:鍋があったまったら、茎を最初に炒めるの。
フラティール:うん、全部入れちゃっていいよ。
フラティール:油が出て、ルズトリィの実が炒めやすくなるから。
ドニィ:こういうのいつ覚えるの?
フラティール:町とか村のおばちゃん
ドニィ:おばちゃん?
フラティール:皮はどっちでもいい。どっちが好き?
ドニィ:むいてあるほうが好きかな?
フラティール:おばちゃんに、村での食べ方をきくの。
ドニィ:皮剥いた
フラティール:そしたら、剥いた皮はほそーく千切りにして、一緒に炒めちゃえばいいよ
ドニィ:なるほどな。
フラティール:そしたら、軽く炒めたら、水を入れて、煮込みます。
ドニィ:葉っぱは?
フラティール:一番最後。ルズトリィの実が柔らかくなってからいれまーす
ドニィ:とりあえず、フタしめとけばいいか
フラティール:うん、弱火めで。ドニィもこっち座ろうよ、お茶入れるから。
ドニィ:うん、そうする。
ドニィ:やっぱり、地元のおばちゃんが一番よく知ってるか
フラティール:こういう商売やってるってものあってさ、聞かれることも多いんだよね。
ドニィ:あぁ、お客さんに?
フラティール:うん。お茶入ったよ、どうぞ
ドニィ:ありがと
フラティール:お客さんにさ「おいしい食べ方ないの?」ってよく聞かれる。だから、かな?
ドニィ:情報収集?
フラティール:そ。レシピも、魔法も、同じような感覚のスキルって感じ。
ドニィ:そか。
フラティール:ねぇ?ドニィ?
ドニィ:ん?
フラティール:イスキロってどんなとこ?
ドニィ:なにもないさ。なーんにも。村があって、畑があって、山があって、海があって。
フラティール:いっぱいあるじゃん
ドニィ:だけど、なーんにもないさ。
フラティール:なんで旅に出る気になったの?
ドニィ:あの頃は、まだ、強気だったから、アーテストで一旗あげてやろう!ってさ。絵具と、ほんの少しの荷物を抱えてさ。
フラティール:アーテストで?!
ドニィ:けど、ダメだった。自分の実力を思い知ったんだよ。
フラティール:ドニィ……
ドニィ:村の中では、絵がうまいほうでさ。自信があった。
ドニィ:けど、アーテストは世界中から集まってくるんだ。気が狂うかと思った。
ドニィ:描いて描いて描きまくって、朝市で並べて。
ドニィ:だけど、1枚も売れなかった。1か月間、ほんの1枚も売れなかった。
フラティール:そっか
ドニィ:そろそろ葉っぱいれていい?
フラティール:うん。葉っぱ入れて、もう少し煮込もう。
ドニィ:だから、あの1か月で、あきらめたんだよ。
ドニィ:自分を誇ることも、絵具に魂を込めて、キャンバスに向かうことも。
ドニィ:ゴルドってた自分も、ぜーんぶ捨てたかった。
フラティール:でも、なんで薬草?
ドニィ:風邪っぴきのせいさ。
フラティール::風邪っぴき?
ドニィ:そいつは「セバス・ジュニア」って名乗ってた。
ドニィ:本名は知らない。立ち寄った街の朝市でさ、げっそりした顔して、ガラガラ声で、「万能薬はいかがですかー」って
フラティール:薬草売り?
ドニィ:そ。だから、言ってやったんだよ、お前の売ってるそれは、効かないのか?って
フラティール:そいつは飲んだの?
ドニィ:いや、ただの胃薬だから、風邪には効かないんだとさ
フラティール:万能薬なのに?
ドニィ:そそ。けど、今日の分を売り切れば、「風邪薬の材料を買えるんだ」とか言うから、なんか、腹立ってきて「そんなガラガラ声で売れるかよ!黙って寝てろ!」って
フラティール:それで?
ドニィ:やってやったさ、大声でまくし立てて、今日買わないと損ですよって。
フラティール:絶対売り切るやつじゃん。で、どうだったの?
ドニィ:完売。即売。受注生産。
フラティール:ですよね。
ドニィ:あー、でもね、そいつの親父がすごい人でさ。秘伝の書を俺にくれたの。写しだけど、何かの縁だって。それが、この本。
フラティール:うわぁ、文字がぎっしり。
ドニィ:だろ?だから、言ってやったの。「文字ばっかりでなんもわかんねぇよ、こんなんじゃ!」って。
フラティール:え?もしかして?
ドニィ:それが、俺の旅の始まり。んで、もう一冊。こっちが、俺の、俺なりの秘伝の書。
フラティール:うわぁ、すごい、すごいよ!絵本みたい!
ドニィ:ありがと。そろそろいいかな、シチュー?食べる?
フラティール:うん、食べよう。すごいよ、ドニィ。才能だよ!魔法だよ!
ドニィ:はい、熱いから気を付けて食べな
フラティール:うん。ありがとう。あ、汚すといけないから返すね。
ドニィ:うん。ありがと
フラティール:いただきます。
ドニィ:どう?
フラティール:美味しい。
ドニィ:あ、うまいうまい。
フラティール:あったまるー
ドニィ:腹が減ってたら、良くないことばっかり考えるからな。な?
フラティール:うるさいなー!ごめんって!
ドニィ:あはは、元気になった
フラティール:おいしいからだもん
ドニィ:フラティール?
フラティール:なに?
ドニィ:一緒に来てくれてさ、ありがとな
フラティール:な、なんだよ、急にさぁ
ドニィ:いや、なんとなく。
フラティール:ばーか。さっさと食わないと、さめちゃうだろ
ドニィ:はいはーい
フラティール:……
ドニィ:……
フラティール:……
ドニィ:……
フラティール:……
ドニィ:なんだよ?
フラティール:ほっぺにシチューついてる
ドニィ:え?どこ?
フラティール:うそ。
ドニィ:なんだよ
フラティール:ドニィってさ、よく見たらカッコイイよね
ドニィ:変なピックロでも入れたろ?それか、バニシスの教えでも読んだか?
フラティール:黙ってればカッコイイのに。
ドニィ:アホなこといってんじゃねぇよ。からかってるつもりか?
ドニィ:買ってないものがあるとか言い始めて、人のコト待たせるし、
ドニィ:ルローの村まで行くってきかねぇから一緒に来てみれば、バテバテだし
フラティール:うん。
ドニィ:あーあ、やっぱ、おいてけばよかったかなぁー
フラティール:……
ドニィ:あー、ふくれてるふくれてる
フラティール:……
ドニィ:うわーすごーーーい、ほっぺがほっぺがピエキールのおなかみたいなってるー
フラティール:んもーーー!
ドニィ:あはははははは、シチューこぼすぞ
フラティール:もーぜんぶ食べたもん。
ドニィ:おかわりする?
フラティール:うん。
ドニィ:じゃ、ちょうど半分こで終わりだな。はい、どうぞ
フラティール:(不機嫌そうに)ありがと
ドニィ:怒んなよ
フラティール:怒ってないもん
ドニィ:どうしたんだよ
フラティール:だって、おいてけばよかったとか、スピケルにいたほうがよかったんじゃないかとか、言うから。
ドニィ:はー、おいしかった。
フラティール:……
ドニィ:あー、シチューおいしーなー。フラティールちゃんもえらいねー、いい子して食べてるねぇー
フラティール:……むぅ、そうやってすぐ子ども扱いする
ドニィ:こどもみたいなもんじゃん。フラティールも、俺も。一緒だよ。食べ終わった?
フラティール:食べた。
ドニィ:鍋とお皿洗ってくるから
フラティール:あとで。
ドニィ:服掴むなよ。
フラティール:どこにも行かないで。
ドニィ:いかないよ、どうしたの?
フラティール:4人で旅するのもさ、終わっちゃうのかなって
ドニィ:フラティール?
フラティール:結婚とかしたらさ、やっぱ、考えちゃうんだろうなぁって。
フラティール:夢とか、目的はあるだろうけど、
フラティール:それでも、もしかしたら、って。
ドニィ:ハーシーとフィジーのこと?
フラティール:うん。だって、無茶できないじゃん。フィジーはスピケルの生まれだし。フィジーのお父さん嬉しそうだった。
ドニィ:旅を続けるヤツは続けるし、辞めるヤツはやめる。
フラティール:そうだけど
ドニィ:それでついてきたのか?俺に。
フラティール:うん、3人であとから追いつけばいいって言ったけどさ、
フラティール:もし、あのふたりが旅をやめちゃったら、アタシ、ドニィとはぐれちゃうじゃんか
ドニィ:ばーか
フラティール:なによぉ
ドニィ:膝枕してやるから、おいで
フラティール:べつに、そういうんじゃなくて……
ドニィ:いいからおいで
フラティール:……頭。
ドニィ:はいはい。
フラティール:……
ドニィ:ホントはさ、さっさと独りで行こうって思ってたんだ。
ドニィ:俺も、同じこと思ってた。4人旅が終わっても、元にもどるだけだろ?って。
フラティール:……
ドニィ:けどさ、俺、待っちゃったんだよなぁ。「うん、いいよ」って言ってさ。
フラティール:アタシ?
ドニィ:そ。フラァのこと、待ちたかった。
フラティール:ドニィ……
ドニィ:けどさーーー、失敗だったわぁーーー(笑)
フラティール:なんでーそーゆーこと言うの。
ドニィ:だってさ、独り旅なんかに戻れそうに無ぇもん。
ドニィ:食材だって2倍居るし、俺のせいで出発が遅くなるかもしれないし、旅の途中で風邪ひいてぶっ倒れるし
フラティール:あったね。薬草売りの不養生。
ドニィ:だろ?
フラティール:うん。
ドニィ:けど、さ。おなかいっぱいルズトリィのシチュー食べて、ペールティーいれてもらって、
フラティール:ひざまくらしてもらって。
ドニィ:いい旅じゃん?
フラティール:ぜいたく。ドニィも?
ドニィ:俺にとっても、幸せな旅だよ。独りじゃこんな気持ちになんてならなかった。
フラティール:ねぇ、ドニィ?
ドニィ:なに?
フラティール:アタシさ、
ドニィ:なに?
フラティール:……ドニィのこと、好き。
ドニィ:うん。知ってる。
フラティール:もう!
ドニィ:知ってるって。膝枕もういいの?
フラティール:まだ!
ドニィ:なんだ、まだ膝枕使うんじゃん。
フラティール:手。
ドニィ:はいはい。
フラティール:……
ドニィ:フラァ?(小声で)どーしたんですかぁ?
フラティール:……
ドニィ:耳、真っ赤だよ
フラティール:……(小声で)ちゃんと言ったのに
ドニィ:(小声で)フラティールさん、お耳真っ赤ですよ。
フラティール:……
ドニィ:フラァ?(小声で)俺も好きだよ。
ドニィ:この俺様、ドニィ様のことが。俺もだーーーい好き。
フラティール:もう!
ドニィ:はい、起きたついでに、お茶飲みましょうねー
フラティール:飲む!
ドニィ:あはははは
フラティール:「俺様のことだーい好き!」ってただのゴルドーじゃん!
ドニィ:きらい?
フラティール:きらいじゃない
ドニィ:きらいじゃないってどういうこと?
フラティール:うるさいうるさい
ドニィ:フラティールさん?どーいうことですかぁー、まだ耳赤いですよ~
フラティール:きらいじゃない!はきらいじゃない!ってこと!
ドニィ:(小声で)俺も、好きだよ、愛してる
フラティール:っ!
ドニィ:この俺様、ドニィ様のことが。俺もだーーーい好き。
フラティール:バカッ!もう!
ドニィ:おとなしく頭撫でられてろって。
フラティール:……
ドニィ:素直にさ、俺も、フラティールのこと好きだよ?けどさ、
フラティール:……
ドニィ:なんか、今のタイミングだとさ、ハーシーとフィジーに感化されたみたいでさ、
ドニィ:なんか、そーゆー感じになっちゃうじゃん?
ドニィ:言ってはないけど、ちゃんと、前から思ってたのにさ、
ドニィ:ってか、フィジーん家が豪華な食事会を開いてくれたってのもあってさ、
ドニィ:なんか、もう、結婚式じゃね?みたいな感じがしてさ、
ドニィ:フィジーもドレスに着替えて出てきたり、ハーシーは見とれちゃってぼーーっとしてるし、
ドニィ:あぁ、結婚するって、いいなぁとか、
ドニィ:フラティールの花嫁姿、悪くないかもな……とか
ドニィ:考えてたら目が合うし。
フラティール:……
ドニィ:な?
フラティール:……
ドニィ:あれ?寝た?
フラティール:……
ドニィ:あれ?もう寝ちゃったんだ。あーあ、俺語ってたのに。
ドニィ:まぁ、でも疲れてたし、しかたないよな。
フラティール:……
ドニィ:……フラティール……俺も、……
フラティール:……
ドニィ:……
フラティール:……
ドニィ:やっぱいわなーい、起きてんだろ
フラティール:もーーー!今の、ちゃんと言うところじゃん!
ドニィ:あはははははは
フラティール:ほぼ言ってるし。はずいはずいはずいはずい。
ドニィ:だって、目が合ったのわかってたろ?
フラティール:ばーーーーか!
ドニィ:もっと、ちゃんと言うよ。山登りでボロボロで、ちいさい焚火と、洗い終わってない鍋と、
ドニィ:膝枕されて、寝落ちそうなヤツと、
フラティール:いいよ、アタシは、いつでも。好きって言ってもらう準備は整ってるから。
ドニィ:おー、自信満々。
フラティール:まぁね。
ドニィ:じゃあ、あきらめるかー
フラティール:あきらめるってなによー、その言い方ひどくない?
ドニィ:もう、独り旅にもどるのを、あきらめるか。って話。
フラティール:あ、そっちね。
ドニィ:フラティールでいいか?こいつしかいないし。なんて、思ってても言わねぇよ。
フラティール:ドニィ!
ドニィ:元気じゃん
フラティール:元気になったの!
フラティール:アタシは、今朝、あきらめた。
フラティール:考えたの。一瞬ね、スピケルではぐれて、ハーシーとフィジーから離れて、ドニィとも離れて、独りにもどろうって。
フラティール:でも、でもさー
ドニィ:膝枕されて言っててもぜんぜん、説得力無いな
フラティール:そうなのーーー。もう、ダメ。だから、試したの。
ドニィ:試した?
フラティール:ドニィを。じゃなくて、自分の運と、時の流れを。
フラティール:まだ独りで旅してた頃にね、ウタウタイが雑に唄ってた言葉が妙に残ってて。
フラティール:『運にまかせましょう、時の流れにまかせましょう』
フラティール:『あなたにつながるものは、ウォルプレアにまかせましょう』
フラティール:『あなたに縁(えにし)のあるものは、ウォルプレアにまかせましょう』って。
ドニィ:ウォルプレアじゃダメじゃん。気まぐれすぎるだろ。
フラティール:そう!でしょ! たぶん、正しいのはちがう。
フラティール:私も、わかんないけど、ちがってるなぁってことだけわかって。
ドニィ:うん。
フラティール:だけど、ドニィが「いいよ」って言ってくれて、
フラティール:待っててくれるのなら、それも、それもいいかなって。
ドニィ:「先行くわ」って言えばよかった
フラティール:ダメなの!
ドニィ:ダメなんじゃん。
フラティール:膝枕しながら、アタシの頭撫でながら嬉しそうに言っててもぜんぜん、説得力無いからね
ドニィ:まぁな
フラティール:でしょ?
ドニィ:俺はさ、月の花のページも生命の花のページも、まだ描けてない。
ドニィ:まだまだ、終わらせられそうにない。それでもいいの?
フラティール:いいよ。ドニィがいいなら。
ドニィ:よし、じゃ、鍋洗って、寝床つくるぞ
フラティール:はーーーい。テント組んどく
ドニィ:よろしくー



【エンドロール(キャスト紹介です)】
ドニィ:【題名】あきらめかけた思いの先に
ドニィ:キャスト
フラティール:フラティール、「演じたあなたの名前」
ドニィ:ドニィ、「演じたあなたの名前」
フラティール:以上で、
ドニィ:お送りしました。



フラティール:おはよー、ドニィ
ドニィ:おはよ、フラティール、顔洗って準備できたら、出発するぞ
フラティール:はーい!あ、なにこれ?
ドニィ:ん?
フラティール:手紙、置いてあった。あ、絶対これ、あのふたり。
ドニィ:妖精の気まぐれのつもりか?
ドニィ:馬が1頭つないであるじゃん。
フラティール:やられた。
ドニィ:なんて?
フラティール:『親愛なるおふたりさま
フラティール: 私たちは、結婚の約束をしたよ。
フラティール: 家族と親戚との時間をつくってくれてありがとう。
フラティール: ルローの村のおじいちゃんの家で待ってます。』
フラティール:だって。
ドニィ:結局、あのふたりも行くのかよ。
フラティール: 見て、これ
ドニィ:追伸?
フラティール:『ふたりも仲良しでよかった。手をつないで寝てるとは思わなかったけど』だって
ドニィ:ばれたな。
フラティール:ばれてるばれてる、とっくの昔にばれてる
ドニィ:じゃ、あきらめるか。
フラティール:そうだよ、あきらめたほうがいい、もうしばらく4人かもだから
ドニィ:だな。
フラティール:アタシがぐっすり寝てたから、だから、起こさずに、お馬さん置いてってくれたんだ
ドニィ:あのふたりらしいな
フラティール:うん。それに、ベルベリーの花。
ドニィ:ハーシーのやりそうなことだな。
フラティール:ねぇ?知ってる?
ドニィ:なに?
フラティール:ベルベリーの花の、花言葉
ドニィ:え?知らない。
フラティール:えー知らないのぉ?
ドニィ:なんだよぉ、
フラティール:さ、準備して行くよ!この子に乗れば、すぐ追いつける。
ドニィ:ちょっと待てよ~、花言葉ってなんなんだよ~
フラティール:秘密ぅ~、さ、準備しないと、おいてっちゃうよ~
ドニィ:フラティール、教えてって
フラティール:じゃあ、朝のキスしてくれたら教えてあげ!っん!
フラティール:ドニィのバカ!ホントにするとかなに考えてんの?
ドニィ:いいじゃん、教えろって
フラティール:秘密!


*** おしまい ***




このお話は、ノベルニアプロジェクトに参加しています。

声劇バージョン

友人に声劇をしていただきました。
楽しさが伝われば嬉しいです。

青ペンの遊び場(仮)

璃月なおさん
『あきらめかけた思いの先に』おーしさんとサシ劇 2023.05.14

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