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「御台本」にて、声劇用シナリオ掲載しています。もしよかったら、ご利用ください。#御台本
— koegeki.com (@koegekicom) 2023年3月26日
御台本 Written by odahttps://oda.koegeki.com
【登場人物】 | 【●性別】 | 【登場人物の概要】 |
---|---|---|
翔子 | ●女性 | 糸崎翔子(いとざきしょうこ)。平社員。26歳。社会人4年目。 |
尚也 | ●男性 | 飯田尚也(いいだなおや)。係長。36歳。独身。 |
【デパート前 待ち合わせ】
●翔子:飯田係長っ、すいません、遅くなっちゃって。
●尚也:いいよ、ぜんぜん、俺もさっき来たとこだし。
●尚也:走って来たの?
●翔子:地下鉄から上がる階段間違えちゃって、
●翔子:あっちから上がったんですけど、
●翔子:信号点滅してたから、
●翔子:走ってきちゃいました。
●尚也:よくわかったね。
●翔子:もちろん、すぐわかりますよ。
●翔子:先輩の今日のスーツも、ステキですね。
●翔子:いつも見ないネクタイの色ですし、
●翔子:雰囲気がちょっとちがってかわいいですね。
●翔子:あー、でも私服も見たかったなぁ。
●尚也:はいはい、年上のおっさんをからかってんじゃねぇよ。
●尚也:とりあえず、ここのデパート行ってみて、
●尚也:なさそうだったら、
●尚也:新南口にもデパートあるから。
●翔子:はい。
●尚也:とりあえず上がって見てみるか?
●翔子:そうですね。
●翔子:あ、あと、
●尚也:どうした?
●翔子:高木課長と、西村課長と、高畠主任から、
●翔子:お金預かってます。
●尚也:あぁ、言ってたな。
●翔子:あ、あれ? どこやっちゃたかな。
●尚也:おい? ウソだろ?
●翔子:封筒、あれ?
●尚也:落としたりしてないよな?
●翔子:あれ?
●翔子:あ、あったあった、こっちのポケットでした。
●尚也:糸崎ぃ(いとざき)、あ~もぉ~、
●尚也:びっくりさせないでくれよぉ。
●翔子:ふふふ、びっくりしました?
●尚也:もー、かんべんしてくれよ、今日は。
●尚也:そういうのいつもいつも。
●翔子:ふふふふ
●尚也:からかってんだろ?
●翔子:あ、ばれました?
●尚也:置いてくぞ。
●翔子:あぁ、待ってくださいよ~。
●翔子:ねぇ?飯田係長?
●尚也:あ、そうだ
●翔子:はい?
●尚也:係長って言うのやめてもらっとこうかな、
●尚也:休日だし、
●尚也:飯田、さん?にしといてくれる?今日は。
●翔子:あ、ごめんなさい。
●翔子:えっと、い、いい飯田さん?
●尚也:いいい飯田じゃないからな。
●尚也:言いにくそうだな?
●翔子:がんばって慣れます。
●翔子:えっと、エスカレーターで行きます?
●翔子:それともエレベーターにします?
●尚也:エレベーターでいこう。
●翔子:何階に上がるんですか?
●翔子:えっと?
●翔子:「贈りもの」とか「おめでたい時」のああいうの
●翔子:なんて言うんでしたっけ?
●尚也:ここだな、
●尚也:ギフトサロンとか、商品券サロン。
●尚也:店によっては、贈答品とか書いてあるかもね。
●尚也:このフロア。覚えておくといいよ。
●翔子:へぇ~。
●尚也:まぁ、デパートにもよるから、
●尚也:インフォメーションで尋ねるのが間違いないね。
●翔子:覚えておきます。
●翔子:ここのデパートは、6階なんですね。
●尚也:とりあえず、エレベーターそこだから
●尚也:上がって店員さんに聞いてみよう?
●翔子:はいっ。
●尚也:あ、ちょうど、エレベーター来てる来てる。
●翔子:(エレベーターの中で)
●翔子:それにしてもですよ?
●尚也:なに?
●翔子:橋本係長と藤本さん結婚するとは思わなかったなぁ。
●尚也:そうか?
●翔子:はい。だって、
●翔子:あそこ、なーんもなさそうに仕事してましたし。
●翔子:ぜんぜんわかんなかったです。
●尚也:え?みんな知ってたよ?
●翔子:え?そうなんですか?
●尚也:もう、4年くらい前じゃないかなぁ?
●翔子:よ、4年も付き合ってたんですか?!
●尚也:よりを戻してからね。
●翔子:よ、よりを戻してから4年?!
●翔子:え?じゃあ、その前から付き合ってたんですか?
●尚也:そうだよ。
●尚也:だから、やっとだよ、やっと。
●尚也:さっさとくっつきゃいいのに。
●翔子:4年前かぁ。
●尚也:4年前って言ったら、あ、そっか、
●尚也:糸崎は新卒採用で入って来たばっかりの時期だもんな。
●翔子:あぁ、だからわからなかったんですね。
●翔子:あの二人はああいう感じがデフォルトっていうか、
●翔子:今思えば、あー確かに!って感じで仲良いんですけど、
●翔子:うちの会社、全体的に仲良しですもんね。
●尚也:そうだなぁ。
●翔子:高木課長と西村課長のところは、
●翔子:夏休みに一緒にこども連れてキャンプ行ってきたって
●翔子:言ってましたし。
●尚也:そうだなぁ。あそこも確かにそうだな。
●翔子:私、不倫してるんだと思ってましたもん。
●尚也:仲良すぎて?
●翔子:そうですよ!あのパターンは、ダブル不倫?
●尚也:ダブル不倫ってなんだよ。
●翔子:高木課長の奥さんと、
●翔子:西村課長の旦那さんも!とか?!
●尚也:見る目あるじゃん?
●翔子:え?
●尚也:うそだよ。バーカ。
●尚也:あそこは健全。
●翔子:びっくりしたー。
●尚也:さっきのお返し。
●翔子:もー。
●尚也:6階だ、降りるぞ。
●尚也:(エレベーターが6階へ到着する)
●尚也:(前の人を少しよけながら)
●尚也:すいません、降ります。すいません。
●尚也:大丈夫か?
●翔子:はい、大丈夫です。
●尚也:えっと、確か、
●尚也:あれ?
●尚也:前来たとき右側にあったような気がしたんだけどな?
●翔子:先輩、あっちのギフトってちがいます?
●尚也:あー、あれあれ。正解。
●尚也:あっちになってたのか。
●尚也:えっと、5人分でいいんだっけ?
●翔子:高木課長、西村課長、高畠主任、
●翔子:飯田係…さんと私の5人分です。
●尚也:はい、飯田係さんです。
●翔子:ごめんなさいっ!もー。
●尚也:んで、いくらずつもらったの?
●翔子:高木課長と西村課長は1万5千円で、
●翔子:高畠主任は7ですね。
●尚也:じゃあ、店員さんに金額伝えて、
●尚也:聞いてみれば大丈夫だな。
●翔子:はい、わかりました。
●翔子:(店員さんに呼びかけて)
●翔子:すいませーん、
●翔子:ちょっとお尋ねしたいんですが……
【買い物を終えてデパートを出るふたり】
●翔子:はぁ~~~。よかった。
●尚也:どうしたの?
●翔子:30分で用事が終わるとか、
●尚也:そんなもんじゃない?
●翔子:やっぱり、飯田さんすごいです。
●尚也:何回かこういうの経験するとわかるよ。
●尚也:まだ、26だっけ?
●翔子:はい。
●尚也:そのうち、飽きるほどやらされるよ。
●翔子:そうなんですか?
●尚也:たぶんね。
●尚也:だけど、ぜーんぶお願いしたら、
●尚也:デパートからちょうどいい日に届けてくれるし。
●翔子:そうですね、便利ですね。
●尚也:まぁ、こちらのデパートさんはそういう商売を
●尚也:昔からされてますから。
●翔子:(感心して)はぁ~すごいですね。
●尚也:どうするかな?
●翔子:どうするって?
●尚也:ん~、お昼には早いし。
●翔子:ちょっと、休憩しません?
●尚也:うん、そうだな。喉乾いたし。
●尚也:どこか行きたいところある?
●翔子:あぁ、あっちに、
●翔子:おしゃれなカフェがあるんですけど、
●尚也:いいとこ、知ってんの?
●翔子:はい、あっちです。
【カフェ(個室あり)にて】
●尚也:へぇ~。
●翔子:(店員と対応中)
●翔子:2人です。前に来たことあります。
●翔子:24番ですね。
●翔子:飯田さん、こっち。
●尚也:なんかおもしろいね、ここ。
●翔子:そうなんですよ、
●翔子:もともとカラオケボックスのお店だったのを、
●翔子:居酒屋にしたらしいんですけど、
●翔子:2年前くらいだったかな?
●翔子:改装してこんな感じになったって。
●尚也:あぁ、だから個室ばっかりなのか。
●尚也:誰かと来たの?
●翔子:はい、大学のころの同期と何回か。
●翔子:あ、ここです。
●翔子:コート掛けます?
●尚也:ハンガーもらうよ。
●翔子:はい。
●尚也:ありがと。
●翔子:横並びの席なんで、
●翔子:先輩、先どうぞ。
●尚也:いや、ここはレディーファーストで。
●翔子:いいんですか?
●尚也:どうぞ?
●翔子:じゃあ、お言葉に甘えて。
●翔子:ここのソファやわらかいんで、
●尚也:ッあ!びっくりしたー。
●尚也:ははは、思ったより沈んだ。
●翔子:気を付けてくださいって、
●翔子:言おうと思ったんですけど。
●尚也:お気づかいありがとう。あはは
●尚也:やべぇソファ。
●翔子:えっとぉ、
●翔子:メニューはこの、
●翔子:タブレットから選んでくださいって。
●尚也:へぇ~。
●尚也:なんか、カラオケっぽいね。
●翔子:最近多いですよね、
●翔子:タブレットでピッピッってやるメニューのところ。
●尚也:あー、確かに。店員さん来なくて済むし。
●翔子:飯田さん、
●翔子:暑かったり寒かったりないですか?
●尚也:ううん、大丈夫。
●翔子:エアコンのリモコン、ここにあるんで。
●尚也:うん。
●尚也:糸崎は?寒くない?
●翔子:大丈夫です。
●尚也:何飲もうかなぁ。
●翔子:なにあります?
●尚也:先、見る?
●翔子:じゃあ、一緒に見ます。
●尚也:ノンアルコールとか、
●尚也:コーヒーもジュースもあるよ?
●翔子:ん~。
●尚也:俺は、カフェオレにしようかな、あったかいの。
●尚也:1個、選択っと。よし。
●尚也:糸崎はオレンジジュースかな?
●尚也:はい、使っていいよ?
●翔子:もー。
●翔子:なんでキッズメニュー開いて渡すんですか。
●翔子:あ、飯田さん?
●尚也:ん?
●翔子:カフェオレ、甘いの付けます?
●尚也:いや、甘くなくていい。
●翔子:じゃ、同じのにしよう。
●翔子:2つ。お砂糖無しっと。
●尚也:(部屋を見渡して)
●尚也:あ~、そうかそうか、
●翔子:どうしたんですか?
●尚也:ドアの名残があるからアレだけど、
●尚也:カラオケボックスの少人数席だった感すごいね。
●尚也:たぶん、このへんに例のちょっと硬いソファ席が、
●尚也:こう、こう、あって、
●翔子:カラオケのテレビ画面があっちですよね?
●尚也:あの天井の角、スピーカーのネジの跡かな?
●翔子:あ、よく見つけましたね。
●尚也:スピーカーならもう一か所つけてあったのが……
●翔子:あそこの角じゃないですか?
●尚也:あれだな、スピーカーつけて音楽鳴ってるのもいいけど、
●尚也:あ~、でも音楽が無いほうが、
●尚也:静かで落ち着くかも、ここ。
●翔子:ですね。
●翔子:これで、お祝いも準備できたし、
●尚也:鈴木専務に頼まれてた商品券も用意できたし。
●尚也:あ、そうだ。
●尚也:週明けにさ、メール送っといて?
●尚也:今日、お金もらった人に、
●尚也:さっきのデパートから送りましたって。
●翔子:わかりました。
●翔子:飯田係長、CC(シーシー)入れますね。
●尚也:良いよ、入れなくて。
●翔子:なんでですか?
●尚也:俺は今日、休みで来てるから。
●翔子:えー、でも。
●尚也:一緒に行ったとかになると、
●尚也:西村課長に「休日出勤つけなさい!」
●尚也:って怒られるから。
●翔子:あ~、
●尚也:実際、1時間かかってないし。
●翔子:わかりました、
●翔子:じゃあ、BCC(ビーシーシー)なら良いですか?
●尚也:間違えんなよ?
●翔子:はい。
●尚也:あー、このソファ寝そう。
●翔子:ヤバいっすね。
●尚也:あーーーーー。
●翔子:温泉じゃないんですから、
●翔子:もう、おっさんくさいなぁ。
●尚也:あーーーーー、もうおっさんです。
●尚也:おっさんおっさん。
●尚也:あー、ネクタイゆるめよう。あー。
●翔子:ねぇ、飯田係長?
●尚也:飯田さん。
●翔子:すいません、飯田さん?
●尚也:あーーーーー、なに?
●翔子:先輩って、思ったより、
●翔子:ファッションセンスあるんですね。
●尚也:思ったよりって余計じゃね?
●翔子:うん、思ったより、かっこいい。
●尚也:はいはーい、褒めてもなーんにもでませんよー。
●翔子:飯田さん?
●尚也:なに?
●翔子:その時計どこで買ったんですか?
●尚也:ベーカリー橋本。
●翔子:え? 会社の前のあのパン屋さん、
●翔子:時計も売ってるんですか?
●尚也:そーなんだよー
●翔子:もう、絶対ウソだし。
●尚也:昨日の昼行ってなかった?
●翔子:行きましたけど……。
●尚也:あそこのパン屋な、
●尚也:ドーナツの隣に置いてあるんだよ。
●翔子:もーー!無いです!無かったです!
●尚也:おかしいなぁ。
●尚也:ドーナツとピザトーストの並びになかった?
●翔子:ないです!
●尚也:あ、チョココロネ食ったとき中から出てきたんだった。
●翔子:飯田さん!からかいすぎです!
●尚也:あははは
●翔子:高かったんですか?
●尚也:ぜんぜん。安物安物。
●翔子:見ていいですか?
●尚也:いいよ?
●尚也:はずそうか?
●翔子:いえ、そのままがいいです、
●翔子:(小声で)時計見たいわけじゃないんで。
●尚也:なに?
●翔子:見てもいいですよね?
●尚也:まぁ、べつに…
●尚也:いいけど、
●翔子:手、動かさないでください。
●尚也:な、なんで?
●翔子:ちょっとここだけ暗くて
●尚也:時計の読み方わかる?
●翔子:わかりますー。
●尚也:えっとねぇ、
●尚也:この短い針が、時間を表していて、
●尚也:この長い針が、分を表しています。
●尚也:時間っていうのが、
●尚也:いちにちを24時間にわけたもので、
●尚也:分っていうのが、
●尚也:1時間を60にわけたものなんですよ
●尚也:この、忙しく動いているのが?
●翔子:……。
●尚也:そんな、フグみたいな顔すんなよ。
●尚也:秒針な秒針。
●翔子:すぐバカにする。むぅぅ……。
●尚也:もういいだろ?
●翔子:飯田係、飯田さんは、お休みの日とか
●翔子:どこで買いものするんですか?
●尚也:飯田係はね~、
●尚也:てきとーにフラフラしてる。
●翔子:この時計は?
●尚也:駅ビルの中のガチャガチャで、300円とか。
●尚也:となりにぐうたら猫とかあってさー。
●翔子:(棒)へぇー300円だったんですねーーーー。
●尚也:(棒)そーなんですよーーー。
●翔子:……。
●尚也:すぐ、フグになる。
●翔子:(小声で)怒りますよ。
●尚也:ちょっと近くない?
●翔子:(小声で)逃げないでくださいよ。
●尚也:ちょっと、ネクタイつかむなって。
●翔子:(小声で)フグが刺しますよ。
●尚也:ちょっと、近い。怒んなって。
●翔子:(小声で)ふ~ん。
●尚也:からかってごめんって。
●翔子:(小声で)飯田さん?どうしたんすか?
●翔子:(小声で)顔をそらさないでくださいよ。
●尚也:…ごめんって。
●尚也:(扉をノックする音)
●尚也:は、はーい、どうぞー、
●尚也:い、糸崎、カフェオレ来たよ。
●尚也:はい、以上で、だ、大丈夫です。
●尚也:あ、砂糖無しでよかったの?
●翔子:はい、大丈夫です。
●尚也:じゃあ、大丈夫です。
●尚也:はーい。
●尚也:……。
●尚也:(大きくため息)
●翔子:(ニヤニヤしながら)
●翔子:どうしたんですか?
●尚也:お前なぁ……。
●尚也:店員にバレるだろうが。
●翔子:バレるって?
●尚也:もー、糸崎のくせに。
●翔子:なにかダメでした?
●尚也:ネクタイ掴まれて、
●尚也:あんな顔で近づいてこられたらな、お前。
●翔子:近づいてきたら?
●尚也:俺だってなぁ……あー、もう。
●尚也:年上からかって遊んでんじゃねーぞ。
●翔子:はーい。
●翔子:飯田さん、こぼさないでくださいよ?
●尚也:わかってるよ。
●尚也:糸崎こそ、こぼすなよ。
●翔子:大丈夫です。
●尚也:あ。おいしいな。
●翔子:うん、おいしいですね。
●翔子:飯田さんでもああいう顔で焦っちゃうんですね。
●尚也:あー、コーヒーおいしい。
●翔子:カフェオレですけど。
●尚也:カフェオレおいしいわぁ。
●翔子:飯田さん?
●尚也:なに?
●翔子:(小声で)ちょっと静かにしてもらっていいですか?
●尚也:(小声で)なに?
●尚也:(小声で)……なになに?
●翔子:しー!だまって。
●尚也:……。
●翔子:……。
●尚也:……なに?俺の顔になんかついてる?
●翔子:しー!だまって。
●翔子:……。
●尚也:……。
●翔子:うん。
●尚也:うん、ってなんだよ。
●翔子:飯田さん。だまってれば、かっこいいのに。
●尚也:バーカ、うるせーよ!
●翔子:メンズ雑誌いけるんじゃないですか?
●尚也:アホなこと言ってんじゃねーよ。
●尚也:ったくよぉ。
●尚也:昨日帰る直前に、
●尚也:買い出し頼まれて泣きそうな顔してたから
●尚也:土曜日、休日返上で、わざわざ、
●尚也:わざわざ新宿まで出てきてやったってのに。
●翔子:え? 今日、約束とかあったんですか?
●尚也:無いけど。
●翔子:そういう言い訳をして~、
●翔子:アタシとデートしたかったんでしょ?
●翔子:飯田せんぱーい?
●尚也:あのなぁ。
●翔子:おひげみたいにミルクの泡ついてますよ?尚也くん?
●尚也:えっ、うそ。
●翔子:ウソですよ(笑)
●尚也:もー、なんなんだよぉ。
●翔子:うふふふふ
●尚也:今日はなんでお前にからかわれなきゃいけないんだよ。
●翔子:あはは
●翔子:たのしい。
●尚也:はいはい、よかったですね~。
●翔子:あ、飯田さん?
●尚也:ん?
●翔子:テーブルありました?
●尚也:う、うん。あったよ。
●翔子:え?そっちだけ?
●尚也:テーブル出てたよ?
●翔子:え?ほんとに?
●尚也:こっちのつかう?
●翔子:こっちもあるはずなんですけど、
●翔子:タブレット置いてるところの、壁の下に、
●翔子:ここから出せるはずなんですけど。
●翔子:あれ?
●翔子:出てこない。あれ?
●尚也:どうしたの?
●翔子:テーブルが出てこないんです、これ。
●尚也:あ、これ?引っ張るの?
●翔子:引っ張れば出るはずなんですけど。
●尚也:あーあ、壊した~。
●翔子:もー、小学生みたいに茶化してないで、
●翔子:手伝ってくださいよ。
●尚也:どうしたらいいんだよ?
●翔子:ちょっと、いったん、
●翔子:コップそっちに置いてもらっていいですか?
●尚也:あぁ、こっちにな、いいよ。
●翔子:はい。
●尚也:ん。
●翔子:あれ?えーなんか変。
●翔子:飯田さん、こっちのちょっと見てみてくださいよ。
●尚也:どれ?これ無理じゃん、引っ張れないよ。
●翔子:あきらめないでくださいよー。
●尚也:壊してもいやじゃん。
●翔子:ダメ。
●尚也:ネクタイ掴むなって。
●翔子:離れようなんて許しませんから、
●翔子:テーブル出してくれるまで、
●翔子:このネクタイ離しませんから。
●尚也:近いなぁ。
●尚也:だって、これもう、
●尚也:壁に埋まってガッチガチじゃん。
●翔子:ねぇ?飯田先輩?
●尚也:困ったなぁ。
●翔子:いいんですよ?こっちに倒れてきても?
●尚也:お前なぁ……。
●翔子:ねぇ、わざとやってるんですか?
●尚也:近い近い、
●翔子:(耳に)ねぇ、先輩?
●翔子:(息をふきかける)ふーーーー。
●尚也:耳はやめろって。
●尚也:これ、店員さん呼べばいいじゃん。
●翔子:先輩、顔赤いですね?
●尚也:うるさいなー。
●翔子:先輩?
●尚也:近いって。
●翔子:照れてる先輩かわいい。
●尚也:バカ言ってないで、はやく店員さん呼んでくれ。
●尚也:もう、無理だから。
●翔子:先輩、かわいい。
●尚也:おまえなぁ(にらむ)
●尚也:……。
●翔子:キスしていい?
●尚也:今じゃないだろ。
●翔子:今じゃなかったらいいんですか?
●尚也:全然テーブル動かないじゃん。
●翔子:あ、話そらした。。
●尚也:壊れてるから店員さんに言おう、な?
●翔子:ちぇー。
●尚也:苦しいって。締まってきてるからマジで。
●翔子:もっと遊べると思ったのに。
●尚也:ネクタイ取ろう。もう。
●翔子:えー、ダメです。
●尚也:ダメじゃないです、もう、外します。
●翔子:ああああ。
●尚也:これは、もうカバンに片づけます。
●翔子:せっかくネクタイしてきたのに。
●尚也:それは俺のセリフだ。
●翔子:私のコーヒーください。
●尚也:はい。
●尚也:テーブルどうする?
●尚也:店員さん呼ぶ?
●翔子:あ、大丈夫です。
●翔子:これ、一回軽く押してたら出てくるヤツなんで。
●尚也:は?
●翔子:グッて押し込んで、
●尚也:あ、出てきた。
●尚也:なんだよ、知ってたんだろ?
●翔子:はい。
●尚也:なんだよーもー。
●尚也:なんか暑いっ。
●翔子:先輩?ドキドキした?
●尚也:しない。
●翔子:えー、なんで?
●翔子:あんな真っ赤な顔してたのに。
●尚也:近い。あついのに。
●翔子:せっかく、後輩が迫ってあげてるのに。
●尚也:はいはいはいはい。
●翔子:なーんだぁ、つまんないなぁ~。
●尚也:つまんないってなんだよ。
●翔子:えーだって、昨日、昼ご飯食べながら、
●翔子:刺激がないとか
●翔子:スマホゲームのガチャも飽きたとか
●翔子:佐々木のおばちゃんと話してたから
●尚也:確かに話してたけど、ちがうんだって。
●尚也:こういうんじゃないっていうかさ。
●翔子:なーーんだ。
●尚也:あっつ。もう。
●翔子:顔赤いですよ?照れてるんじゃないですか?
●尚也:なんで、糸崎なんかに遊ばれなきゃいけないんだよ。
●尚也:なんか、むかつくなぁ。
●翔子:あははははは、たのしい!
●尚也:そりゃよかったよかった。
●翔子:先輩はたのしくないんですか?
●尚也:はい、たのしいです、たのしいです。
●翔子:心がこもってないです。
●尚也:あー、もう、どこでそういう
●尚也:ぶりっ子キャラ覚えてくるんだよ
●翔子:えー、わかんなーーい。
●尚也:うぜぇなぁ。
●翔子:ねぇ?尚也ぁ?
●翔子:こういうのきらい?
●尚也:……あのなぁ。
●尚也:学生のころそういうバイトしてたの?
●翔子:してません!
●尚也:あはは
●尚也:その道のプロかと思った。
●翔子:その道のプロって?!
●翔子:あー、尚也先輩わぁ、
●翔子:こーいぅ、ぶりっ子キャラのほうがぁ?
●翔子:好きだったりしちゃうんですかぁ?
●尚也:…だから
●翔子:あ、性癖に刺さっちゃいました?
●尚也:ちげぇって。
●尚也:もー、このソファがダメなんだよ、
●尚也:調子にのるから。このバカが。
●翔子:あははは
●翔子:参ってる参ってる
●尚也:なんなんだよったくよぉ。
●翔子:困ります?
●尚也:困る困る、困ります。
●翔子:まぁそうですよね~
●翔子:横並びとか、なんか、
●翔子:恋人みたいになっちゃいますもんね。
●尚也:おまえさ、知ってて来たんだろ?
●翔子:まぁ。そうですね。
●尚也:ほかの男の人連れて来ればいいじゃん。
●翔子:えーー、
●尚也:えーじゃない。
●尚也:糸崎はさぁ、
●翔子:なんですか?
●尚也:黙っておとなしくしてたら
●尚也:そこそこ見た目は良いんだから。
●尚也:俺じゃなくても喜んで来てくれるだろ?
●翔子:えー、だって。
●翔子:……。
●尚也:な、なんだよ。
●翔子:尚也せんぱい?、
●尚也:…。
●翔子:アタシ、尚也さんがいいんだけど。
●尚也:……。
●翔子:……。
●尚也:……っく、だからおまえさぁ、
●翔子:っていうのどうですか?
●尚也:バーカ。
●翔子:いや、感想ですよ、感想。
●翔子:次、ちゃんとした男の人と一緒に来て、
●翔子:こういうので、落とせるかどうか?!っていう。
●尚也:(ため息)
●尚也:はいはい、ドキドキします、
●尚也:ドキドキしますよー。
●尚也:いけるいける。
●尚也:成人男性の方を、8人でも9人でも。
●尚也:(ため息)
●尚也:糸崎監督なら、野球でもサッカーでも
●尚也:なんでもやったらいいじゃねぇかよ。
●翔子:尚也先輩、首どうしたんですか?
●尚也:え?
●翔子:ここですよ、
●翔子:耳のすぐ下の、
●尚也:え?なんかある?
●翔子:触りますね。ここに、こう。
●尚也:んっ、ちょっと。
●翔子:……。
●尚也:……。
●翔子:……。
●尚也:いつまでさわってんだよ。
●尚也:なぁ?なにがあんの?
●翔子:脈が速いですね~。
●尚也:うるさいなぁ、
●尚也:しれっと脈測るな!
●翔子:いや、だってめちゃくちゃ早いじゃないですか。
●翔子:あはははははは
●尚也:バカ、うるさい。
●尚也:もーー、疲れた。
●尚也:調子狂うなー、今日。
●翔子:あはははははは
●尚也:変な汗かくし。もー。
●翔子:あ、尚也せんぱい?
●翔子:(ささやく)
●翔子:疲れたんなら場所変えて休憩します?
●尚也:え?
●翔子:(ささやく)
●翔子:場所変えて、『休憩』します?
●尚也:休憩してるじゃん。
●翔子:(ささやく)
●翔子:場所変えて、『休憩』とかしませんか?
●尚也:え?
●尚也:休憩しにきたじゃん?
●翔子:もーーー。
●尚也:え?どした?
●翔子:カフェにきて、
●翔子:半分くらいカフェオレ飲んで。
●翔子:『休憩』って言ったら?
●尚也:もう一軒カフェとか行くの?
●尚也:あー、女子はケーキとか
●尚也:甘いものも好きだからなぁ。
●尚也:でも、俺はコーヒー一杯でいいよ。
●翔子:もーーー!
●尚也:何怒ってんだよ。
●翔子:ど・ん・か・ん!
●尚也:ちょっとなに言ってるかわかんないっすね?
●翔子:もーそんなんだからモテないんですよ!
●尚也:怒んなよ。
●尚也:モテないのは知ってるって。
●翔子:あー、もう。
●尚也:怒んなって。
●翔子:怒ってないです!
●尚也:なんで、怒ってんだよ。
●翔子:ちょっとは、揺らいでくれてもよくないですか?
●翔子:アタシだって、
●翔子:……恥ずかしいんですから。
●翔子:そういう話題……
●尚也:そういう?
●尚也:ん?
●翔子:……。
●尚也:あー、はいはい。
●尚也:ラブホ行って一発やりますか?って話?
●翔子:……。
●尚也:え?ちがった?
●翔子:もー。
●尚也:今から行く?土曜日の午前中だし?
●尚也:あ、でも、俺、ゴム持ってないよ?
●翔子:(ため息)
●尚也:あ、でも、買えばいいか。
●尚也:ドラッグストアでも、コンビニでも?
●翔子:(ため息)
●翔子:もー、ぜんぜんだめ。
●尚也:あー、わかった。
●尚也:東口のドンキでも行って買う?
●尚也:お徳用の百個入りとか売ってるかも!ってこと?
●尚也:おまえ、そんなヤバい誘い方すんなって。
●尚也:彼氏いないからって
●尚也:発情しすぎだろ。
●翔子:んもぉーーー!
●翔子:台無し!
●尚也:あはははは
●尚也:笑うトコだろ?
●尚也:(ぶりっ子真似て)
●尚也:百個とかって、先輩もつんですか~?って、
●尚也:いちにちじゃ使い切れませんよーあははって、
●尚也:フグみたいな顔して笑うトコだろ。
●翔子:……。
●尚也:なんだよ。
●翔子:ぜんぜん、笑えない。
●尚也:はいはい。
●尚也:すいませんでしたー。
●尚也:どした?栄養足りてないんじゃないの?
●尚也:お子様用の牛乳でも頼む?
●尚也:カルシウム足りてないんだろ?
●翔子:足りてません!
●尚也:じゃあ、頼む?
●尚也:俺も冷たいもの頼もうかなぁ。
●翔子:ぜんぜん、ダメ。
●尚也:どうしたんだよ?
●翔子:ぜんぜん、ダメ。
●尚也:何がダメなんだよ?
●翔子:あれもこれも。
●尚也:いやいや具体的に言わないとわかんないよ?
●翔子:あれもこれも。
●尚也:あれもこれもじゃわかんないって?
●翔子:……。
●尚也:なんで今日、そんなにからかうの?
●翔子:……。
●尚也:どしたの?
●翔子:好きだからです。
●翔子:尚也先輩のこと。
●尚也:俺、コーラにするけど、オレンジジュースにする?
●翔子:はい。
●尚也:ん。頼んだよ、オレンジジュース。
●翔子:ありがとうございます。
●尚也:変だよ、今日。
●翔子:そうやってスルーするし。
●尚也:なにを?
●翔子:好きだからです。
●翔子:尚也先輩のこと。って言ったの。
●尚也:……いや、……ね、……だから、あのね、
●翔子:尚也先輩のこと、好きだからです。
●尚也:(深呼吸)
●尚也:冗談はやめとこうな。
●翔子:いや、冗談とかじゃなくて、
●翔子:ふつうに、
●翔子:尚也先輩のこと好きなんです、アタシ。
●尚也:いや、えっと、だからね?
●翔子:ダメですか? 好きになったら?
●尚也:いや、ダメとかそういうんじゃないけど。
●翔子:彼女、いるんですか?
●尚也:…いないけど、
●翔子:好きな人いるんですか?
●尚也:い……ない…けど、
●翔子:結婚してましたっけ?
●尚也:うるせぇな、独身だよ。
●尚也:なんなんだよ?
●翔子:じゃあ、いいじゃん。
●尚也:じゃあって…、だからね?
●翔子:はい。
●尚也:急に言われてもさ、
●翔子:はい。
●尚也:心の準備とかできるわけないじゃん?
●翔子:あー、なるほどなるほど。
●尚也:なるほどじゃねーよ、ったくよぉ。
●翔子:はい。
●翔子:じゃあ、尚也先輩?
●尚也:なに?
●翔子:深呼吸して~、ほら。
●尚也:は?
●翔子:はい、吸って~
●尚也:(深呼吸 吸って)
●翔子:はいて~。
●尚也:(深呼吸 はく)
●翔子:吸って~
●尚也:(深呼吸 吸って)
●翔子:はい、尚也先輩、好きです。
●尚也:(咳こむ)
●尚也:ゴホッゴホッゴホッ。
●尚也:だから、あのねぇ?
●翔子:今、来るってわかってましたよね?
●翔子:深呼吸して、準備できてましたよね?
●翔子:今日、3回目ですよ?
●翔子:大事なことなので3回言いました。
●翔子:尚也先輩、好きです。付き合ってください。
●尚也:いや、あのね、だから。
●翔子:4回目。
●尚也:どうされたいの?
●翔子:どうって?
●尚也:(店員が来る)
●尚也:はーい。
●尚也:コーラこっちで。
●尚也:ありがとうございます。
●尚也:はい、以上で大丈夫です、はーい。
●尚也:とりあえず、オレンジジュース飲んで落ち着けって
●翔子:……。
●尚也:はい、ストローちゃんとしてあげるから。
●尚也:はい、どうぞ。
●翔子:……。
●尚也:冷たい飲み物、おいしいだろ?
●翔子:うん。
●尚也:あー、コーラうめぇ。
●尚也:(大きくため息)
●尚也:のど乾いてたの?
●翔子:……うん。
●尚也:うちの会社も地方の零細企業じゃねぇんだからさ。
●尚也:同期だっていっぱいいるだろ?
●尚也:営業所にだって、
●尚也:男が俺だけってわけじゃないんだし。
●尚也:将来有望なヤツだったら、
●尚也:俺より若いヤツらのほうがしっかりしてるし、
●尚也:なんで10個も年が離れた俺なんだよ。
●尚也:遊びたいなら、遊びでもいいと思うよ?
●尚也:だけど、俺なんか相手に遊んでどうすんだよ?
●翔子:だって……
●尚也:休みにすることが無くて
●尚也:無趣味ですって言ったって、
●尚也:スマホで探せば遊ぶところいっぱいあるだろ?
●翔子:そうですけど……
●尚也:どうしたいの?
●翔子:……。
●尚也:はい、指導1(イチ)。
●翔子:え?
●尚也:そこは、間を置かずに、
●尚也:「尚也先輩がいいんです」って言うとこだろ。
●翔子:え?
●尚也:顔上げて、「尚也先輩がいいんです」って。
●翔子:あ、はい。
●尚也:はい、言って?
●尚也:だれでもいいの?それとも?
●翔子:はい、尚也先輩が良いです。
●尚也:そうそう、迷う必要ないだろ?そこ。
●尚也:好きなんだろ?
●翔子:好きです、けど、
●翔子:……だって、先輩がなんで俺なんだとか、
●翔子:他のヤツらのほうがいいだろとか言うから、
●翔子:あー確かに、
●翔子:尚也先輩、将来有望かって言ったら、
●翔子:そんなことないよな~って。
●尚也:は?
●翔子:(叩かれる)
●翔子:痛っ。
●尚也:おまえなぁ。
●尚也:ホントにさ?
●尚也:からかってるだけだろ?
●尚也:怒るぞ?
●翔子:だって。
●尚也:だって、じゃなくてな?
●尚也:俺は、
●翔子:「お前のことを思って言ってるんだぞ」
●尚也:そうだよ。
●翔子:だって、
●翔子:そうやって本気で言ってくれてるの、
●翔子:飯田係長だけだったんだもん。
●翔子:そりゃぁ、学生の頃のバイトとか、
●翔子:担任の先生とか、
●翔子:おなじような言葉で言う人はいたけど、
●翔子:厳密に言えば、課も、となりでちがうのに、
●翔子:忙しいのに、
●翔子:休憩室で泣いてるの見つけて声かけてくれるの、
●翔子:飯田係長だけだったんだもん。
●尚也:そりゃ、同じ部署のやつらも心配してたさ。
●尚也:高木課長も西村課長も心配してたさ。
●尚也:橋本も高畠も、藤本さんも。
●翔子:誰かに言われたから来てくれたんですか?
●尚也:そうじゃないけど。
●尚也:会社の人間として、
●尚也:誰かがサポートしてやって、
●尚也:みんながなんとか踏ん張れるようにするのが、
●尚也:俺らの役目だろ。
●翔子:そうですか。
●翔子:(深呼吸)
●翔子:そうですよね。仕事ですもんね。
●翔子:新卒にやめられたら、
●翔子:2年目にやめられたら
●翔子:3年目にやめられたら、
●翔子:4年目にやめられたら、
●翔子:そりゃ、困りますもんね。
●翔子:私がカンチガイしてただけでした。
●翔子:すみませんでした。
●翔子:……。
●翔子:帰ります。
●尚也:待てよ。
●尚也:……。
●翔子:……。
●尚也:座れ。
●尚也:(ため息)
●尚也:はい、指導2。
●翔子:え?
●尚也:いいか?糸崎?
●翔子:は、はい。
●尚也:物分かりが良い。ってのは、
●尚也:確かに糸崎の強みでもある。
●尚也:理解力があって、推察力もある。
●尚也:関係者の力量っつーか、バランスっつーか、
●尚也:背景にぼんやり見えるそういうのも、
●尚也:察しが良いからバランスよく見えてる。
●翔子:は、はい。
●尚也:でもな、
●翔子:は、はい。
●尚也:引いていいトコロと、
●尚也:引いちゃいけないトコロってのが、
●尚也:まだ、わかってない。だろ?
●翔子:は、はい。
●尚也:糸崎はな、わかってんだよ。
●尚也:直感で、今は引いちゃダメだって時が。
●翔子:え?
●尚也:先週の、社長プレゼンあったろ?
●翔子:はい。
●尚也:高畠の背中を糸崎が小突いて、
●尚也:高畠が「ですが社長!」って。
●翔子:……あ。あれは……。
●尚也:あれは?
●翔子:高畠主任、すぐビビるから、
●翔子:「俺がビビってたら、つつけ」って言うから、
●尚也:高畠主任に言われたから?
●翔子:はい。
●尚也:タイミング最高だったんだよなぁ~。
●尚也:笑ったよ。
●翔子:あそこしかないって思ったし、
●翔子:あのタイミングで大切なことを
●翔子:ちゃんと説明できなかったら、
●翔子:本気だって思ってもらえないし、
●翔子:全部無駄になるの悔しかったから。
●翔子:社長だって、聞く耳持ってくれてたし、
●翔子:……だから。
●尚也:できるじゃん。
●尚也:(頭を撫でる尚也)
●尚也:ちゃんと。
●翔子:……そうやって子ども扱いするから。
●翔子:私だって、あきらめようって思ったんです。
●翔子:先輩は10個もちがうし。
●翔子:私なんて、ただのこどもだし、
●翔子:友だちに話しても、
●翔子:歳の差の話になるし。
●翔子:先週の金曜日の夜に、
●翔子:佐々木のおばちゃんに話聞いてもらって、
●翔子:晩御飯食べにおいでって言ってもらって
●翔子:全部聞いてもらって、泣いて。
●翔子:あきらめようって思って。
●翔子:あきらめたはずだったんです!
●翔子:だけど、なのに、
●翔子:飯田係長、優しいんだもん。
●翔子:ずるいですよ。
●尚也:ずるいって言われてもなぁ。
●翔子:昨日とか、困ってるときに、
●翔子:明日、一緒に行ってやろうか?なんて
●翔子:そーゆーことサラッと言う人なんか、
●翔子:いないんですから!
●尚也:あ、はい。ごめん。
●翔子:いいですか!
●尚也:な、なに?
●翔子:飯田さん、決めました!
●尚也:なに?
●翔子:今日から一年間、
●翔子:アタシと、付き合ってください。
●翔子:それで、例えば、仕事がやりにくいとか、
●翔子:やっぱり、仕事上のつきあいのほうが、
●翔子:その、適切だとか。
●翔子:そういうのあったら、
●尚也:あぁ、うん。
●翔子:元に戻ります。
●尚也:…はい。
●翔子:元に戻れるか、アタシわかんないけど、
●翔子:正直、自信無いですけど。
●尚也:うん。それはその時考えよう。
●翔子:1年経って、
●翔子:大丈夫だなって思ってもらえたら、
●尚也:大丈夫なら?
●翔子:……その、なんていうか、
●尚也:なれたらね。
●尚也:今、言わなくていいよ。
●尚也:その、そういうことは。
●尚也:俺もちゃんと考えることだし。
●翔子:はい。
●尚也:そういうことだろ?
●翔子:飯田係長……。
●尚也:だから、係長ってのをやめてくれって、
●翔子:あ、すいません、飯田さん。
●尚也:なんかさー、あーーもう。
●尚也:これはこれで、調子狂うんだよ?
●尚也:係長として、先輩社員として、
●尚也:その、しっかりしなきゃいけないって
●尚也:俺も、その、自分をいましめてるっていうか、
●尚也:ちゃんとした距離をだな……その…。
●翔子:アタシにとっては、ステキな先輩です。
●尚也:あのなぁ?
●尚也:そう言えば良いと思ってんだろ?
●翔子:ん~、アタシも複雑なんです。
●翔子:なんて言ったらいいんだろ…そのぉ、
●翔子:あ、わかった!
●尚也:ん?なに?
●翔子:アタシ、やっぱり、
●翔子:飯田さんが好きなんですよ。
●尚也:知ってる。
●翔子:たぶん、どんな、飯田さんも、
●翔子:バリバリ仕事モードな飯田さんも、
●翔子:困って頭抱えてるモードな飯田さんも、
●翔子:自販機の前で疲れきって、
●翔子:どうしようもない飯田さんも
●翔子:ぜんぶ好きなんですよ。
●尚也:はいはい。
●翔子:ダメですか?
●尚也:ダメじゃないけど……
●翔子:ダメじゃないけどなんですか?
●尚也:だからぁ、
●尚也:……困らせるなぁもぉ。
●翔子:飯田さん、アタシ、好きです。
●尚也:わかってる。
●翔子:(笑顔)ふふふふ。
●尚也:飯田さん飯田さんってなぁ。
●翔子:飯田さんは飯田さんじゃないですか、
●翔子:ちがう呼び方していいんですか?
●尚也:さっきも好き勝手呼んでたくせに。
●翔子:アタシはいいですよ?
●翔子:「翔子」って呼んでくれても。
●尚也:あのなぁ。
●翔子:ある日突然、会社で「翔子」って。
●翔子:アタシはうれしいですよ?
●尚也:あのなぁ…。
●尚也:からかうのもいい加減にしろよ。
●翔子:はーい。
●翔子:あ、でも、真面目に、
●翔子:会社では、今まで通り「いとざき」で。
●尚也:当たり前だろ。
●翔子:(笑顔)ふふふふ。
●尚也:よし、わかった、翔子、
●翔子:え。あ、はい。
●尚也:翔子、いいか?
●翔子:は、はい。
●尚也:正直に言うけど、
●尚也:俺も、糸崎翔子のことが好きでした。
●翔子:……。
●尚也:……。
●翔子:……。
●尚也:……。
●翔子:……。
●尚也:……。
●翔子:……。
●尚也:……。
●翔子:……え?
●尚也:もう言ったからな。
●尚也:俺は一回しか言わないからな。
●翔子:……好きでしたって?過去形?
●尚也:今もだよ。バカ。
●尚也:残業してたり、慣れないのにがんばってたり、
●尚也:一生懸命勉強して準備してたり、
●尚也:眠れなくて大事な日に遅刻して来たり
●尚也:寝ぐせの頭で、祝日に
●尚也:「すいませんでした!!あれ?」って。
●翔子:あ、あれは!
●尚也:でも、翔子は、お前は、後輩だから、
●尚也:俺のこと好きになるなんてありえないじゃん?
●翔子:尚也さんのこと好きですけど。
●尚也:わかってる。
●尚也:常識的に考えてな?
●翔子:好きです。
●尚也:知ってる。聞けよ。
●翔子:はい。
●尚也:十個も下の子がな?
●尚也:そういう対象で見てくれることなんて、
●尚也:絶対ないと思ってたから。
●尚也:だから、あきらめてた。
●尚也:親友が連休に俺ん家遊びにくるっていうから、
●尚也:飲んで、愚痴って、
●尚也:飲んで、愚痴って、
●尚也:飲んで、愚痴って、あきらめて。
●翔子:そうだったんですか。
●尚也:そうだったんだよ。半年前に。
●尚也:なのに、なんだこれ。
●尚也:はー、しんどい。
●翔子:そうだったんですね。
●翔子:アタシ、もっと早く見破ってれば勝てたのに!
●尚也:負けてたまるかよ!
●尚也:絶対バレないように生きてやる。
●尚也:あきらめたはずなのになぁ。
●尚也:がんばってあきらめたのになぁ。
●翔子:あきらめます?
●尚也:あきらめないけど?
●翔子:うれしい。
●尚也:俺もうれしいけど、
●尚也:やっとあきらめついたと思ったのになぁ。
●尚也:(ため息)
●尚也:だけど、
●尚也:橋本と藤本さん結婚するって聞いてさ……。
●尚也:マジでなんか、むかついたんだよな。
●翔子:どうして?
●尚也:大ゲンカして、ぜってぇ口もきかない!とか、
●尚也:そんなヤツらがさ?
●翔子:そんなことあったんですね。
●尚也:さんざん同期に迷惑かけといてさ、
●尚也:「やっぱり結婚します」じゃねぇよ。
●尚也:せめて、付き合ってますぐらい
●尚也:公言してから、決めろよ。
●尚也:いちゃいちゃいちゃいちゃしやがって。
●翔子:そんなにいちゃいちゃしてるようには
●翔子:見えなかったですけど……。
●尚也:まぁ、あいつら組んでるから、
●尚也:仕事早すぎて助かってるけどさ。
●翔子:そうだったんですね。
●尚也:なのにさー。
●尚也:自分は叶いもしない後輩に、
●尚也:自販機で飲み物買って渡してるだけで
●尚也:妙に、満足してさ。
●尚也:俺も、同じベンチで泣いてたなぁ~とか。
●尚也:昔を思い出してさ~。
●尚也:聞いたら、同じようなトコでつまずいて、
●尚也:どうしたらいいですか?って。
●尚也:そりゃ攻略法くらいでてくるさ。
●尚也:自分にアドバイスしてるようなもんだもん。
●翔子:……尚也さん。
●尚也:今の俺だって、アドバイスもらいてぇよ。
●尚也:って、愚痴ってるだけでなんにもできないしさ。
●尚也:そしたら、佐々木のおばちゃんが、
●尚也:自販機のとこで休憩してたら、
●尚也:すすすーって近づいてきてさ
●尚也:『あんた、結婚費用くらい貯金してんだろ?』
●尚也:とか、言いやがってさ。
●尚也:ふざけんなっての。
●翔子:あれ?
●翔子:佐々木のおばちゃんにバレてたんですか?
●尚也:バレてたよ。
●尚也:隠しても無理。
●尚也:佐々木のおばちゃんにはバレる。
●翔子:やっぱりすごい人ですよね。
●尚也:っていうか、
●尚也:おばちゃんに言われて気づいたって感じかな。
●翔子:気づいた?
●尚也:お前のこと「心配なんだ」って言ったら、
●尚也:佐々木のおばちゃんが、
●尚也:(真似して)
●尚也:「それが恋ってやつよ、うふふ」ってさ。
●翔子:いつですかそれ?
●尚也:2年前くらいかな?
●翔子:2年前?
●尚也:なんかあった?
●翔子:佐々木のおばちゃんに、
●翔子:お昼食べてたときに、
●翔子:お昼、テレビでドラマつけてるじゃないですか?
●尚也:うん。
●翔子:アタシが「恋したいな~」って言ったら、
●翔子:佐々木のおばちゃんが、
●翔子:(真似して)
●翔子:「あんたはまだはやい。
●翔子: 3年は修行だと思って辛抱しな」って。
●尚也:3年?
●翔子:うん。
●尚也:3年経ったな?
●翔子:もう、4年目です、アタシ。
●尚也:あれ?
●翔子:どうしたんですか?
●尚也:今日って、誰に言われた?
●翔子:高木課長に、買ってこいってお金渡されました。
●尚也:おかしくないか?
●翔子:え?
●尚也:だって、こういうのこそ、
●尚也:佐々木のおばちゃんが行くじゃん?
●翔子:あ、それなら、
●翔子:佐々木のおばちゃんが週末は時間とれないから、
●翔子:代わりに頼んでもいいか?って。
●尚也:いつ?
●翔子:昨日、金曜日の昼休み前です。
●尚也:俺、佐々木のおばちゃんに、
●尚也:二人の結婚決まった直後くらいのときにさ、
●尚也:「土曜日、手伝ってくれない?」って言われてたんだ。
●尚也:んで、昨日の昼休みに、
●尚也:「明日用事入れてないわよね?」って念押しされて。
●翔子:予定、あけてたんですか?
●尚也:あけてたっていうか、
●翔子:あー、入れられないですよね。
●尚也:だろ?
●尚也:んで、夕方、
●尚也:おばちゃん帰ったあとに電話きてさ
●尚也:「時間とれなくなっちゃって
●尚也: 翔子ちゃんに頼まなくちゃいけなくなったのよぉ。
●尚也: 慣れてないから、きっと困っちゃうわよねぇ」
●尚也:って、昨日の17時過ぎ?くらい。
●翔子:あ。
●尚也:あ。
●翔子:あーーーーー!!!
●尚也:あーーーーー!!!
●翔子:これ、
●尚也:だろ?
●翔子:はい、どうあがいても、
●尚也:うん、
●翔子:会社にバレてますね。
●尚也:あきらめるか。
●翔子:あきらめたほうがいいと思います。
●尚也:佐々木のおばちゃんにしてやられたか。
●翔子:アタシには天使に見えますけど?
●尚也:おばちゃんに羽生えてんの?
●翔子:うん。
●尚也:似合わね~な~。
●翔子:怒られますよそんなこと言ったら
●尚也:よし、あきらめて覚悟しよ。
●翔子:アタシも、あきらめて覚悟します。
●尚也:なぁ?翔子?
●翔子:は、はい。
●尚也:俺の恋人になってくれる?
●翔子:はい、よろしくお願いします。
●尚也:あ、よろしくお願いします。
●翔子:ふふふふふ
●尚也:あーーあーーー、
●翔子:どうしたんですか?
●尚也:(嬉しそうに)
●尚也:なんかさー。
●翔子:なんですか?
●尚也:なんか悔しいんだよ!
●翔子:あははは、
●翔子:尚也さん、やっぱり、かわいい、
●翔子:大好きです。
*** おわり ***
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