御台本

御台本 - Written by oda

あなたとチャラいの考察を
【登場人物】 【●性別】 【登場人物の概要】
哲平 男性 能城哲平(のしろてっぺい)。男性 大学2年生。モテないことに悩んでいる。
真琴 女性 後藤真琴(ごとうまこと)。大学4年生。恋多き女性。

あらすじ

サークルの仲間との宅呑み。
23時すぎから始まった呑み会も、2月いつものメンバーで呑む最後の呑み会の日。
けれど、お酒に弱いボクは、また、いつの間にか眠ってしまって。
気づいたら昼過ぎだった。

あなたとチャラいの考察を

【真琴の家。マンションの一室にて】
真琴は台所と床に座る高さのテーブルを往復している。
哲平:ん! あ! やば!
哲平:今日朝から哲学あったのに、
真琴:(台所から呼びかけて)
真琴:あ、起きたー?
真琴:おはよ、哲平。
哲平:あれ?哲学の講義、あれ?
真琴:今日、お休みでしょ。
哲平:あ、あ、そうか、
真琴:(呟く)お味噌汁あっためとくかな。
哲平:昨日みんなで呑んでたんだった。
真琴:うん。
哲平:んあ!みんなは?みんなは?
真琴:もう帰ったよ。
哲平:え?まだ3時?
真琴:午後3時ね。
哲平:しまった……。ボクとしたことが……。
真琴:いいんじゃない?
真琴:今日、用事無いんでしょ?
哲平:無いです。
哲平:だけどですよ?
哲平:送別会だっていうのに。
真琴:大丈夫よ、卒業式はまだ来月だし。
哲平:まぁ、そうですね。
真琴:(近づいてきて、また台所へ戻る)
真琴:はい、お水。
哲平:あ、ありがとうございます。
真琴:山岡くんは、始発で帰ったし、
真琴:茜ちゃんと信也は9時頃だったかな。
真琴:今日もバイトあるらしくて帰ったし。
哲平:真琴先輩は?
真琴:ここアタシん家。
哲平:あ、そうでした。
真琴:大丈夫。今日、のんびりできる日だから。
哲平:なんか、すみません。
真琴:そんな深刻な顔しなくても。
真琴:正座なんかしてないで、
真琴:足崩してなよ。
哲平:へい。
真琴:冷蔵庫にまだあったかなぁ。
哲平:いや、先輩?
真琴:お酒でも飲む?
哲平:いや、今起きたばっかりですよ、ボク。
真琴:昼間っから飲むのもいいよ?
哲平:確かに……。
真琴:ウィスキーもまだちょっと残ってるし、
真琴:缶チューハイもたしか、まだ冷えてるし、
哲平:そんなにボクを酔わせてどうする気ですか?
真琴:哲平の寝顔見てよっかな?
哲平:いやぁ、もう……
哲平:真琴先輩も山岡先輩も、
哲平:なんでそんなにチャラいんですか。
真琴:ホントにお酒飲む?
哲平:いや……
真琴:よし、お味噌汁あったまったよ。
哲平:バイトは明日の夕方からだけど…、
哲平:どうしようかな……。
真琴:(近づいて)
真琴:はい、お味噌汁どうぞ。
哲平:あ、ありがとうございます。
哲平:冷蔵庫にお水あります?
真琴:あるよ。
哲平:あ、取りに行っていいですか?
真琴:いいよ、座ってて。
哲平:いただきます。
哲平:んあー、おいしい。
真琴:やっぱり、お酒飲もうかなぁ。
哲平:真琴先輩が飲むならつきあいます。
真琴:じゃあ、缶チューハイつきあって。
哲平:はい。
真琴:どうぞ、レモンしかないけど。
哲平:ありがとう。
真琴:一応、お水も置いとくね。
哲平:ありがとう。
哲平:あ、クッションこれ、
真琴:ありがと。
真琴:じゃあ、カンパイ。
哲平:カンパイ。
真琴:(飲んで)
真琴:あー、おいしい。
哲平:あ、あかない。
真琴:もー、なにやってんの。
哲平:寝起きで指にチカラはいらなくて。
真琴:はい。
哲平:すいません。
哲平:(飲んで)
哲平:……ふーー。
真琴:(飲んで)
真琴:あー、これおいしい。
哲平:真琴先輩?
真琴:なに?
哲平:どうやったら、ボクもチャラくなれますかね?
真琴:え?なに?
哲平:えっとですね、その、
真琴:まずは、すぐ正座するのやめようか。
哲平:あ、はい。
真琴:どしたの急に?
哲平:あの、なんというか、
真琴:うん?
哲平:先輩お二人の姿を見ていて、
哲平:常々、その、会話の節々に
真琴:あー、山岡くんとアタシ?
哲平:はい。
真琴:あー、チャラい?
哲平:ええ。というか、なんというか、
哲平:その、遊び心が多彩というか、
哲平:余裕があるというか。
真琴:そうなんだ?
哲平:あ、いや、気分を害されたら、すみません。
真琴:いや、ぜんぜん、害さないけど。
哲平:なんだか、うらやましくてですね。
真琴:その、眼鏡クイっもやめようか?
哲平:あ、すいません。
真琴:謝りながらすぐやるし。
哲平:あ、えっと、あの、
真琴:どしたの?急に?
真琴:なんかあった?
哲平:いやぁ、ボクも、その、
真琴:正座しない。
哲平:あ、すいません。
哲平:ボクも、その、
哲平:2年生が終わるわけでして。
真琴:そうですねぇ。
哲平:その……なんというか。
真琴:モテたいんだ?
哲平:んはっ!
真琴:その声どっからだしてんの?
哲平:いや、その…。
真琴:モテたいんでしょ?
哲平:……はい。
真琴:チャラいの関係なくない?
哲平:いや、選択教養の哲学2で、
真琴:あぁ、佐藤先生の取ったって言ってたね。
哲平:ええ。
哲平:それで、ボク、感銘を受けまして。
真琴:感銘?
哲平:『人と人との関係性において、
哲平: 一言一句、およびその行動は、
哲平: すべて、哲学なのである』と。
真琴:佐藤先生それしか言わなくない?
哲平:いえ、それがすべてなんです。
真琴:はぁ。
真琴:今年も試験に出たの?
哲平:はい。1問目が、穴埋めの、
哲平:『人と人との関係性において、
哲平: 一言一句、およびその行動は、
哲平: すべて、哲学なのである』
哲平:を書かされて、
真琴:うん。
哲平:2問目は、自由記述で。
真琴:あ、一緒だ。
哲平:ボクは思ったんですよ、
真琴:うん?
哲平:チャラさも、哲学なのではないか?と。
真琴:はぁ。
哲平:チャラさも、哲学なのではないか?と。
真琴:かんぱーい。
哲平:乾杯。
真琴:もう酔った?
哲平:まだ、大丈夫です。
真琴:哲学ねぇ…。
哲平:これは仮説なのですが、
真琴:あ、はい。
哲平:関係性を構築しているからこそ、
哲平:言い合える言葉が、その、
哲平:チャラさを醸し出している。
哲平:つまり、チャラさを感じるというのは、
哲平:関係性であるというのがひとつ。
真琴:うん。
哲平:もうひとつは、
哲平:チャラさは個の気質に含まれる、
哲平:個体差としての、チャラさであり、
哲平:個人が持つ素養である。
哲平:という仮説です。
真琴:ふーん。
哲平:良い反応ですよ、真琴先輩。
真琴:え?
哲平:その「ふーん」がですね、
哲平:相手がボクだから出せる、
哲平:空気感としての、
哲平:半分程度は聞き流している
哲平:という軽やかさなのか?
真琴:あ、ばれた?
哲平:はい、ばれてます。
哲平:続けます。
真琴:ごめん。
哲平:もしくは、
哲平:真琴先輩であるから、
哲平:相手がいかような相手であっても、
哲平:このような話題である場合には、
哲平:さっきの、「ふーん」を
哲平:軽やかに繰り出すことができるという、
哲平:個性だと言えるものなのか?
哲平:どっちでしょうか?
真琴:えー。
哲平:えーではなくてですね。
真琴:わかんないもん。
真琴:そんなこと考えたことない。
哲平:では、今、考えてみてください。
真琴:ん~、
真琴:佐藤先生的にはさ、
真琴:『それこそが関係性である』
真琴:ってことでしょ?
哲平:そうなんです。
真琴:えー、でもさー、
真琴:いつもチャラいわけじゃないじゃん?
哲平:なるほど。
真琴:チャラい時だけチャラいじゃん?
哲平:それは、テクニックとしての
哲平:後天的なチャラさなのでしょうか?
哲平:それとも、先天的なものなのでしょうか?
真琴:ん~
真琴:まぁ、ある意味で、
真琴:才能みたいなものかもしれないけどさ?
哲平:…才能。
真琴:でも、そうね、
真琴:語彙力とか、対応力としての、
真琴:「チャラさ」であれば、後天的な要素よね?
哲平:なるほど。
哲平:ボクにもその、「チャラさ」を
哲平:身に着けることが、その、
哲平:可能になるということでしょうか?
真琴:どんなことでもさ?
真琴:ピアノの練習をすれば、
真琴:それなりに音は出るようになるかもしれない
真琴:けど、S席八千円で売れるとは?
哲平:限りませんねぇ。
哲平:うーん。
真琴:あ、じゃあさ?
哲平:はい。
真琴:チャラい言葉で言ってみてよ?
哲平:え?
真琴:哲平が思う、チャラさで。
哲平:いや、それがすぐできたら、
哲平:困ってませんよ。
真琴:じゃあ、そのお味噌汁ほめて?
哲平:……とてもおいしいです。
真琴:それは、哲平じゃん?
哲平:……んー
真琴:もっと流れるように
哲平:このお味噌汁は、絹ごし豆腐が優しく、
哲平:わかめとお揚げさんがあいまみえることで
哲平:見た目でも、舌でも頼もしく、
哲平:それを支える出汁のうまみと、
哲平:麦味噌の甘さとえんみが、
哲平:くちの中でほどけるように、
哲平:まろやかに香ります。
真琴:真面目か。
哲平:いかがでしょうか?
真琴:哲平が哲平でしかないのよ。
哲平:山岡先輩ならなんと言うんでしょうか?
真琴:(ひとくちのんで4年生の山岡を真似る)
真琴:「あー、ずりぃな、
真琴: これだよな、これ。」
哲平:んはーーーー。
真琴:どう?
哲平:言います。
哲平:言ってなくても言いそうです。
哲平:ちなみに、信也くんは?
真琴:信也?
真琴:なんて言ってたかなぁ。
真琴:ん~とねぇ、
真琴:(ひとくちのんで1年生の信也を真似る)
真琴:「胃にしみる~。
真琴: やっぱりおいしい、
真琴: 真琴先輩のお味噌汁、
真琴: すっごい好き。」
真琴:とかそんな感じだったと思う。
哲平:チャラい!
真琴:そう?
哲平:信也もなかなかの曲者にござる。
真琴:そうかな?
哲平:いや、なかなかのチャラ哲学を
哲平:構築されておりますな。
真琴:チャラ哲学って……。
哲平:……(大きくため息)
真琴:そんなため息つかなくても。
哲平:なんていうんですか?
哲平:弱小校のギリギリ人数がそろった野球部が、
哲平:1回戦に全国優勝候補の学校に当たって、
哲平:初球に先頭打者ホームランくらったような
哲平:そんな気分です。
真琴:よくわかんないけど、
真琴:でもさー。
哲平:なんですか?
真琴:男の子の良さってさ、
真琴:いろんな良さがあるから
真琴:良いんだと思うんだよね?
哲平:といいますと?
真琴:正座しなくていいから。
哲平:いえ、ここは。
真琴:山岡くんには山岡くんの良さがあって。
真琴:信也には信也の良さがあって。
真琴:たぶん、哲平にも、哲平の良さが…
哲平:……。
真琴:無いかもしれないし、
哲平:え?
真琴:有るかもしれない。
哲平:…はい。
真琴:チャラいからって言って、
真琴:みんながみんな、好きなわけじゃないじゃない?
真琴:チャラくないほうが、
真琴:好きな人のほうがきっと多いし。
真琴:チャラい順に彼女できていく?
哲平:んー、それは、ややその傾向があるように思いますが。
真琴:それはうがって見すぎ。
哲平:そうですか?
真琴:哲平には、哲平の良さを、
真琴:ちゃんと認めて、
真琴:哲平だから付き合いたいって思ってくれる
真琴:そういう人がきっといるはずよ。
哲平:……真琴先輩。
真琴:アタシは、いまの、
真琴:ありのままの哲平が好きだけどね。
哲平:……(ため息)
真琴:哲平?ため息なんてついてないでさー、
真琴:そこは、それこそ、
真琴:「まぁ、当然ですよ、
真琴: ボクが哲平ですから」
真琴:くらい言わないと。
哲平:はぁー、心折れますわ。
真琴:なにが?
哲平:自覚無き真琴先輩のチャラさが、
哲平:最高に炸裂したんですよ。
真琴:そう?
哲平:爆裂ですよ、爆裂。
真琴:爆裂?。
哲平:そうですよ。
真琴:どこが?
哲平:「アタシは、いまの、
哲平: ありのままの哲平が好きだけどね」
哲平:とか言われたらね?
真琴:うん?
哲平:ボクが何も知らない、そう、
哲平:中学2年生の男子だったら、
真琴:中学2年生の男子だったら?
哲平:存分に勘違いしてしまいますね!
真琴:勘違いって?
哲平:くはーーーー。
哲平:わかっててやってるでしょ?
真琴:わかんない。
真琴:哲平ぃ?勘違いってなに?
哲平:やってられっかぁ
哲平:(缶チューハイを飲む)
真琴:だ、ダメだって一気に呑んだら!
哲平:大丈夫です、ボクは、
哲平:そんなグビグビいけませんから。
真琴:どのくらい飲んだの?
哲平:はい。
真琴:ぜんぜん減ってないじゃん。
哲平:まぁ、当然ですよ、ご安心ください
哲平:ボクが哲平ですから。
真琴:顔、赤っ。
真琴:ほっぺ触っていい?
哲平:……
真琴:ふふふふ、りんごみたーい。
哲平:……、
哲平:これか……
真琴:これかって?
哲平:これが、チャラさか……。
真琴:やめてよー。チャラくないって別に。
哲平:くはーぁーーーー、
真琴:だ、大丈夫?
哲平:ボクには無理だーーーー。
真琴:そんな、倒れこんでジタバタしなくても
哲平:ジタバタしますよ。
哲平:むしろねぇ、ジタバタしてたんですよ。
真琴:なるほど?
哲平:ですが、
真琴:あ、起きた。
哲平:ボクは、
哲平:自分に無いものを、
哲平:求めすぎたんだと悟りました。
真琴:て、哲平?
哲平:ボクは2つの仮説に囚われすぎていた。
哲平:その前提として、チャラさというのは、
哲平:その人が携える、空気感や、
哲平:個性としての物言いにあると錯覚していたんです。
哲平:結論が出ました。
真琴:結論出たの?
哲平:はい。
真琴:哲平が思う、チャラさとは?
哲平:哲学です。
真琴:は?
哲平:チャラさそのものが、
哲平:その人を形成する哲学なのですよ。
真琴:あ、眼鏡クイッがでた。
哲平:ボクが思う、チャラさというのは、
哲平:その人の、生きる道であり、
哲平:生きざまなのだと、理解しました。
真琴:なんか、おおげさじゃない?
哲平:いえ、目が覚めましたよ。
真琴:哲平?
哲平:真琴先輩、ありがとうございます。
哲平:ボクは、ボクの哲学を、
哲平:自分の生きる道を、
哲平:生きようと思います。
真琴:はい。ぜひ、そうしてください。
哲平:真琴先輩、乾杯っ!
真琴:それでさー、
哲平:(飲んで)
哲平:ふはーーーー、うまい。
真琴:哲平、モテたいんじゃないの?
哲平:んはっ!
哲平:しまったぁ、そうでした。
哲平:真琴先輩、
哲平:どうやったらモテますかね?
真琴:そのさ、
真琴:正座して、眼鏡クイッってやるの、
哲平:やめたほうがいいですか?
真琴:いや、むしろね?
真琴:そーゆーのが好きな子探せばいいと思うよ?
哲平:くはーーー、
哲平:この世は厳しいっすねぇ!
真琴:なにが?
哲平:真琴先輩がそーゆーこと言いますか!


*** おわり ***


※2022.01.18 初稿
物語の構想・着想に、璃月なおさんのご協力を頂きました。
誠にありがとうございます。
※2022.01.18 加筆・修正
加筆修正しました。アーカイブ等への影響はありません。

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