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— koegeki.com (@koegekicom) 2023年3月26日
御台本 Written by odahttps://oda.koegeki.com
【登場人物】 | 【●性別】 | 【登場人物の概要】 |
---|---|---|
ボクらと雪とキラキラと。 | ●朗読用 | 小説の形式です。朗読用にお使いください。 |
◆登場人物
ボク (鈴木紗希:すずき さき)
俊也 (足立俊也:あだち としや)
◆◆◆
雪を見たのは、それが初めてだった。
小学校3年生の終わり、ボクはこの町に引っ越してきた。
『ボクらと雪とキラキラと』
お母さんの手を握って新幹線の駅に降りた。
そこからタクシーに乗ってしばらく走ると海が見えてきた。
水平線はずっと遠くまで続いている。
「お母さん?」
「どうしたの?」
お母さんはニコニコしながら尋ねる。
「どこまでいくの?」
「大丈夫、ほらここよ」
路地を曲がったタクシーがゆっくりと止まって、ドアが開いた。
ボクとお母さんはとある家の前に降り立った。
「誰の家なの?」
ボクはまだ会ったことの無い親戚の人の家だと思った。
だから、気持ちの準備をするために尋ねた。
だけど、
「紗希ちゃん、あなたの住むお家よ」
お母さんはそう言った。
「あなたのお部屋もちゃんとあるし、台所も広いんだから」
お母さんは嬉しそうだった。
お母さんが「ほらね」と指差した表札。
――鈴木
そこにはボクの名字が確かに刻まれていた。
頭の中は混乱していたけど、びっくりしたけど、でも、お母さんが嬉しそうだったからボクも嬉しかった。
「紗希ちゃん?あなたの部屋はここよ」
階段を上がって、左の扉。
大きな窓と、桜色したカーテン。
ベッドの上のお布団も淡い桜色。
部屋にあるのはベッドだけだったけど、さわるとふわふわしていた。
お母さんが「このピンク色嫌じゃなかった?」って聞いてくれたけど、ボクの一番好きな色だった。
だから、
「好きな色。それに、ふわふわしてる」
ボクは嬉しかったから嬉しいよって言った。 そしたらやっぱりお母さんも嬉しそうだった。
窓から外を見ると、青くて透き通った空が広がった。
少し離れた向かいに一軒の家が立っていた。
「あそこは?」ってボクが尋ねると、
「足立さん家」
お母さんは少し考えて、
「確か、あなたと同い年の男の子がいたはずよ、ほら」
指差した先で、男の子が庭で遊んでいた。
地面に落ちてる白いのを拾って、家の壁に投げつける。
地面の白を拾っては、家の壁に投げつける。
「お母さん? あれなにやってるの?」
お母さんもちょっと困った顔をして、だけど言った。
「たぶん、雪じゃないかしら?」
「雪?」
「もうほとんどとけちゃってるけど、男の子が、ほら、拾ってるの、」
「あの白いの?」
「そう、あれが雪」
ボクは何度も何度も繰り返し繰り返し投げている男の子を見つめていた。
肩で息をして、だけど、また拾ったその雪をおもいっきり壁に投げつける 。
雪というその白いものは、壁に当たると砕けてキラキラ輝いた。
ボクはそのキラキラを綺麗だと思った。
ボクにとって『雪』ってものの認識は、だから、『拾って投げるための綺麗な白いもの』だった。
ボクが雪を見たのは、それが初めてだったんだから。
*** おしまい ***
◆題名『ボクらと雪とキラキラと。』
◆登場人物
ボク (鈴木紗希)
俊也 (足立俊也)
2011.12.07
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