御台本

御台本 - Written by oda

4色ボールペンとカッターナイフ
【登場人物】 【●性別】 【登場人物の概要】
4ペン 性別不問 4色ボールペン。
>ナイフ 性別不問 カッターナイフ

あらすじ

4色ボールペンとカッターナイフです。

4色ボールペンとカッターナイフ


ナイフ:ったくよー、ありえねぇだろうがよ!
ナイフ:んぁ?ふざけんなよ!
ナイフ:あー、イライラすんなー
4ペン:どうしたんですか?
ナイフ:うるせぇ、おめぇに関係ぇ無ぇだろうがよ
4ペン:それはそうですけど、
4ペン:すぐ隣でそんなにイライラされたら、
4ペン:こっちもおちつきませんから
ナイフ:『こっちもおちつきませんから』じゃねぇーよ、
4ペン:そんなぁ。
4ペン:おこらないでくださいよ
ナイフ:怒ってねーよ。
ナイフ:っつーかよぉ、おまえのしゃべりかたさー
4ペン:なんですか?
ナイフ:なんかイライラすんだよ
4ペン:そんなふうに言われても、
4ペン:僕はフツーにしてるだけなんですけどねぇ
ナイフ:かーーー!
ナイフ:『僕はフツーにしてるだけなんですけどねー』
ナイフ:あーイライラするー。
ナイフ:天才きどりか!
4ペン:天才って、僕はそんなつもりはありませんよ。
ナイフ:『僕はそんなつもりはありませんよ』
ナイフ:じゃねーよ、何様だよ!
ナイフ:あ”ー、イライラすんなぁー
4ペン:そんな風に、すぐキレるのは身体によくないですよ?
ナイフ:悪りぃかよ?
4ペン:いえ、僕はちょっと心配に思っただけです。
ナイフ:あ、ありがとう。
4ペン:いえいえ
ナイフ:とか言ってよー、
ナイフ:内心あれだろ?
ナイフ:『カッターナイフなんだから、テメーはキレてあたりまえだろ』
ナイフ:とか思ってんだろ?
4ペン:やめてくださいよ、そんな言いがかり
ナイフ:『やめてくださいよ、そんな言いがかり』
ナイフ:……くぁーーーーー!イライラする!
4ペン:ちょっと、僕は何も言って無いじゃないですか。
ナイフ:俺にはわかんだよ、
ナイフ:お前が頭の中のそのインクでなに考えてるか?くらいはな。
ナイフ:くぁーーーー!
4ペン:……。
ナイフ:どうせ頭の中も4色なんだろ?
ナイフ:あっちでこう言って、
ナイフ:こっちでこう言って。
4ペン:そんな……
ナイフ:じゃあ、聴くけどよ?
4ペン:はい。
ナイフ:俺がこうやって、
ナイフ:なにかとキレてるのをよぉ、
ナイフ:一度くらいは笑ってみてたことあんだろ?
4ペン:……。
ナイフ:どうなんだよ?
ナイフ:……んぁ?どうなんだよ?
4ペン:…………そりゃ、1度くらいはありますよ、よくキレるなぁって。
ナイフ:ほれ見てみろよ。
4ペン:だって、カッターナイフがよくキレるとか、
4ペン:オヤジでも言わないですよ。
ナイフ:誰がオヤジだよ。
ナイフ:なんだよ?悪いかよ?
ナイフ:昭和生まれのカッターナイフですよ?
ナイフ:ここの家に来て、もう40年。
ナイフ:悪いですか?え?いけませんか?
ナイフ:ダイヤルまわして刃を止めるネジ式ですよ?
ナイフ:悪いですか?
4ペン:悪いなんて言って無いじゃないですか、
4ペン:よくきれるなぁって思っただけです。
ナイフ:いけませんか?
ナイフ:切れなくなるたんびに少しずつ折って折られて、
ナイフ:小さくなって、
ナイフ:今じゃ、あと3回分くらいですよ?
ナイフ:それがなにか?
4ペン:(微笑み)フフッ。
4ペン:今日もよく切れますね。
4ペン:気持ちがいいくらいに
ナイフ:くぁーーーーー、
ナイフ:何様だぁ!てめぇ!
ナイフ:なんだ?いっつもいっつも
ナイフ:上から目線でものを言いやがって。
4ペン:上からって、そんなつもりじゃ
ナイフ:あー、あれですか?
ナイフ:4色あるからえらいんですか?
ナイフ:ボールペンの中でも、4色あるから?
4ペン:正直、うん。
4ペン:自分で言うのもなんですけど、
4ペン:素直に便利だと思いますけど
ナイフ:くあーーーー出たよ。
ナイフ:『便利だと思いますけど』
ナイフ:けーーー、ナニモンだてめぇ。
4ペン:私はただの4色ボールペンです。
4ペン:ただって言っても、
4ペン:メーカー希望小売価格550円ですけど。
ナイフ:『メーカー希望小売価格550円ですけど』
ナイフ:くぁーーー、イライラさせんな!
ナイフ:知ってるよ、お前の横っ面見りゃわかるよ!
4ペン:カッターさんは、おいくらだったんですか?
ナイフ:なんだよ?文句あんのかよ?
4ペン:いえ、ただの好奇心でお尋ねしただけですけど
ナイフ:もうわかんねぇよ、
ナイフ:っつーか、バーコードがついてたかどうかすらわかんねぇよ。
4ペン:(微笑み)フフッ、そうだったんですか。
ナイフ:なにわらってんだよ?んあ?
4ペン:笑ってませんよ
ナイフ:文房具屋のおとうちゃんが、
ナイフ:ひとつひとつそろばんはじいて売ってたんですよ?
ナイフ:いけませんか?
4ペン:なつかしいですよね
ナイフ:はいはい、いいですねいいですね、
ナイフ:バーコードもついて、
ナイフ:黒も赤も?青も!
ナイフ:さらに緑までついて!
4ペン:お買い得でしょ?
ナイフ:『お買い得でしょ?』
ナイフ:じゃねーーーーよ。
ナイフ:なんですか?
ナイフ:複数の色が書けるとえらいんですか?
4ペン:そんな、それもうひがみじゃないですか。
ナイフ:黒がかけると少しえらくて、
ナイフ:赤が書けるともうちょっとえらくて、
ナイフ:青が書けるともっとえらくて?
4ペン:ちょっと、なんなんですか?(笑)
ナイフ:緑が書けるレベルになると、
ナイフ:それはもう文房具の世界では、
ナイフ:『天才』。
4ペン:『天才』って言うと思った(笑)
ナイフ:ニヤニヤしてんじゃねぇよ!
ナイフ:かーーーーーもうイライラすんなぁおめぇ
4ペン:天才っていう言葉好きですよね。
ナイフ:『天才っていう言葉好きですよね』
ナイフ:……くぁー、好きですよ好きですよ?
ナイフ:いけませんか?
4ペン:いけないことは無いと思います。
ナイフ:あ。(まじまじと見つめる)
ナイフ:なぁ?おまえさー?
4ペン:なんでしょう?
ナイフ:緑、
4ペン:なんですか?
ナイフ:緑、へってなくね?
4ペン:…………。
ナイフ:減ってないですよね?
ナイフ:あんまり。
ナイフ:おや?図星ですか?
4ペン:……べつに。
4ペン:それが何か?
ナイフ:あははははははは、
ナイフ:やっぱりそうなんだ!
ナイフ:減ってないよね? 緑?
4ペン:(泣きそうに)……だから?
4ペン:なんなんですか?
ナイフ:4色あるんだから、
ナイフ:もっと堂々としてくださいよー、
ナイフ:たとえ緑色を使ってもらえてなくても
4ペン:……それ以上言うと、切れますよ。
ナイフ:ぬはははは、ぼうず、
ナイフ:切れるのは俺の仕事だ。
4ペン:下手なんです、ご主人様。
4ペン:緑の使い方、下手なんですよ。
4ペン:ついでに言うと、青もほとんど減ってません。
ナイフ:え?なんで?
ナイフ:青は使うだろ?
4ペン:そう思いますよね?
4ペン:最初は、僕、手帳に挟んで使ってもらえていたんです
ナイフ:おお。いいじゃん。
4ペン:だけど、あの人……、
4ペン:緑色、結局1度しか使いませんでした、
4ペン:っていうか、正確に言うと、ゼロ回です。
ナイフ:ぜろ?
4ペン:お店で、試し書きした1度だけです。
4ペン:青だって、カレンダーの土曜日に、
4ペン:くるっと丸を描いただけ。
4ペン:4月と5月にそうやって使って、
4ペン:6月からは、もう、やりませんでした。
ナイフ:赤は?
4ペン:赤は、ですから、
4ペン:日曜日に丸をくるっと。
4ペン:あとは、お仕事が休みの日に、
4ペン:休みと漢字を一文字書いて。
4ペン:時折、大切な用事には、時間を赤で書いたり、
4ペン:印をしたり、まぁ、それなりに、ですけどね
ナイフ:結局、黒だけ使ってたと?
4ペン:そうなんです。黒がなくなったから、
4ペン:新しいボールペンに替えちゃったみたいです。
ナイフ:おまえの次は、2色とか?
4ペン:いえ、黒1色。
ナイフ:それは正しい判断かもしれないな。
4ペン:それは、僕もそう思います。
4ペン:だけど、僕だってまだまだやれるんです、
4ペン:リフィルを買ってくれれば。
ナイフ:リフィル?
4ペン:替えの芯です、黒の。
4ペン:まだ、売ってるんです。
4ペン:僕だって、ロングセラー商品ですから、
4ペン:買ってもらったのは4年前ですけど、
4ペン:まだ手に入ります。
4ペン:ご主人様とよく行った、
4ペン:あの文房具屋さんなら、
4ペン:まだあります!
ナイフ:替え芯か……。
ナイフ:悪かったな、あることないこと、
4ペン:やめてください、僕はべつになんとも
ナイフ:お前のこと、
ナイフ:正直今日まで好きじゃなかったんだけど、
ナイフ:言いすぎたよ、謝る。
ナイフ:ごめんな、すまなかった。
4ペン:いえ、やめてください。
ナイフ:替え芯っていうのなら、俺も……な、
4ペン:もしかして?
ナイフ:統一規格ってやつさ。
ナイフ:俺だって、まだやれる、
ナイフ:やれるはずなんだ、けどな……。
4ペン:カッターさんも……。
ナイフ:俺の場合は、古すぎるから手に入るかどうかわからないが、
ナイフ:少なくとも、まだ、あと2回はこの刃が折れるんだ、
ナイフ:新しく使えるチカラは……まだ残ってる
4ペン:知らないだけなんですよ、ね、きっと。
ナイフ:そうだな。
4ペン:文房具屋さんのおとうさんとおかあさんなら、
4ペン:きっと使ってくれますよね、僕らのことも。
ナイフ:あぁ、間違いないな、
ナイフ:特におかあちゃんは、
ナイフ:新聞に入ってるチラシの裏使ってメモ書きしてたしな、
ナイフ:自分の店でメモ帳仕入れて売るほどあるってのによぉ。
4ペン:そうそう、クリップで留めて、
4ペン:電話のところと、
4ペン:自宅のテレビの横のところの小さな戸棚に置いて。
ナイフ:よく知ってるな。
4ペン:僕も、あのお店から来ましたから。
ナイフ:そうだったのか。
ナイフ:お前の青も緑も、
ナイフ:おかあちゃんの手に掛かれば、一生モンだよ。
4ペン:もっと大切にしてもらえたらいいですよね、
4ペン:僕たちの後輩も。
ナイフ:そうだな。
ナイフ:っつーか、あきらめんな、
ナイフ:お前だって、まだ、インク詰まってんだろ?
4ペン:はい。
ナイフ:俺たちは、まだ机の上のペンたてに置いてもらえてるんだ。
ナイフ:ここにいるってことは、
ナイフ:可能性はゼロじゃない。
4ペン:そうでした。
4ペン:そうですよね、僕たちだってまだ、
ナイフ:あ、ドアが開いた。
4ペン:ど、どうしましょう
ナイフ:しっ、静かに、あの人が来た。
4ペン:あ、手帳開くみたいですね。
ナイフ:お前の出番だぞ、
ナイフ:ほら、いってこい、大丈夫だ!
ナイフ:自信もって、行ってこい!
4ペン:はいっ!
ナイフ:(ナレーション)
ナイフ:ペン立てから引っ張り出された4色ボールペンは、
ナイフ:電話中の主(あるじ)のために、一生懸命メモをとった。
ナイフ:黒も、赤も、青も。
ナイフ:ついでに、緑も。
ナイフ:4色ボールペンが戻ってきた。
ナイフ:お帰り。
4ペン:ふー。
ナイフ:緑色も大活躍じゃねぇか!
4ペン:ふーー。(嬉しそうに)
4ペン:ちょっと、大忙しでした。
ナイフ:赤も、青も大活躍だったな
4ペン:はい!やりました!
ナイフ:いい顔してるじゃねぇか。
4ペン:えへへ。
4ペン:(驚いて)あ、カッターさん!
ナイフ:(ナレーション)
ナイフ:次の瞬間、今度は俺がペン立てから引っ張り出された。
4ペン:(ナレーション)
4ペン:カッターさんは、残った刃を1段折られると、
4ペン:新しい刃になって、鋭いその切れ味を発揮した。
4ペン:封筒のくちを、スパッと一瞬で切り開くと、
4ペン:カッターさんがペン立てに戻ってきた。
4ペン:新しい刃先が、キラキラと輝いている。
4ペン:ご主人様は急いで部屋を出て行った。
ナイフ:あー、びっくりしたぁ。
4ペン:一瞬でしたね。
ナイフ:ま、まぁな。
4ペン:新しい刃先も、かっこいいです。
ナイフ:(照れて)う、うるせぇ。
4ペン:かっこいいですよ。
ナイフ:そ、そうか?
ナイフ:あ、ありがとう。
ナイフ:っつ、っつーか、
ナイフ:きゅ、急にそういうこと、
ナイフ:い、言うなよな。
4ペン:カッターさんは、
4ペン:いつもかっこいいですよ。
ナイフ:も、もう、いいって。
ナイフ:わ、わかったからよぉ。
4ペン:カッターさん、
ナイフ:ん?
4ペン:僕、ちょっとあこがれてたんです、
4ペン:カッターさんのその鋭い切れ味に。
ナイフ:俺は、あれだ。
ナイフ:俺は、コレしかできないからよぉ。
4ペン:僕も、インクを出すことしかできないですから。
ナイフ:俺たち文房具はそんなもんさ。
4ペン:そうですよね。
4ペン:カッターさんのおかげでがんばれました。
4ペン:ありがとうございます。
ナイフ:バカやろう、こっちの台詞だ。
ナイフ:これからも、仲良くやろうや。
ナイフ:よろしくな!
4ペン:はい!

*** おしまい ***


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