御台本

御台本 - Written by oda

恋人は大学教授
【登場人物】 【●性別】 【登場人物の概要】
根岸奈々実 女性 ねぎしななみ
高畑宗志郎 男性 たかはた そうしろう

あらすじ

恋人は大学教授です。

恋人は大学教授

高畑:点Eの接線の傾きが、右下がりの時、需要、点Dは供給の点Qに対し
高畑:このように変化するわけであります。であるからして、自由市場が形成されていると仮定した場合
高畑:消費財Aの需要と供給は、消費財Bの需要量と供給量とに関係なく
高畑:均衡点が推移していくわけであります。
高畑:このように、アダムスミスが提唱した「神の見えざる手」と呼ばれる現象も説明がつくわけであります
高畑:今日は、ここまで
根岸:せんせー?
高畑:またキミですか
根岸:しつもーん
高畑:次の講義もあるんでしょう?
根岸:せんせー、しつもーん
高畑:次の講義は何を取っているんですか?基礎教養かなにかですか?
根岸:せんせーは、恋人とかいるんですか?
高畑:小野先生の金融理論を取ってるなら、早く行ったほうがいいですよ
根岸:せーんせーー、恋人とかいるんですか?
高畑:いません
根岸:はーい!立候補しまーす
高畑:あのねぇ、40後半のおじさんをからかうもんじゃありませんよ。ほら、行った行った
根岸:だってー、好きになったら仕方ないじゃないですかぁー?
高畑:君は、僕の講義を聞いていましたか?
根岸:はーい!全然わかりませーん
高畑:ん~、それはそれで凹むんですけれども、いいですか?
根岸:はーい
高畑:物事には、需要と供給という相互の力学が発生するんです
根岸:うん
高畑:需要があっても、供給がなされなければ、それは市場を形成したとは言えないんです
高畑:その逆もしかり。需要がないところには供給されても、市場とはならない
高畑:つまり、均衡点は生まれない
根岸:でもー、神様は見えざる手を使って、うまいことするんでしょぉ?
高畑:自由市場が形成されている場合にのみ当てはまります
根岸:えー、神様なにやってんのぉ?
高畑:であるからして、
根岸:はーい!
高畑:はい、キミ。
根岸:にっぽんわぁ、自由恋愛できる国でーす
高畑:そうですね。そうかもしれませんね
根岸:なんでダメなんですかぁ?
高畑:私は、46歳なわけです
根岸:うん
高畑:キミは?
根岸:ハタチぃ!
高畑:に、まだなってないんでしょう?
根岸:はーい。まだ、でーす
高畑:お父さん何歳?
根岸:42ぃ。
高畑:うわぁ、凹みますよ。けど、まぁいいでしょう
根岸:でもぉ、好きになったら年齢なんて関係ないと思いまーす
高畑:そう言っていられるのも、今のうちですよ。イテテテテ
根岸:せんせー、どうしたのぉ?
高畑:最近、歯が痛くて、水がしみるんですよ
根岸:虫歯ぁ?おやつ食べて歯を磨かなかったんでしょぉー?
高畑:それだけじゃないんですよ、老いってやつですよ。知覚過敏だけならまだしも、
高畑:もしかしたら、歯槽膿漏かもしれない
根岸:しそーのーろー?なーにーそーれ?
高畑:まぁ、知らないなら知らないほうがいいんですよ
高畑:知らなくていいことは知らなくていい
根岸:せんせー、そーろーなの?
高畑:大学教授捕まえて何言ってるんですか?未成年なのに
根岸:こうねんき?とか?
高畑:そうかもしれませんね、ボロボロですから、あっちもこっちも、老いて老いて老いまくりですよ
根岸:えー、でも好きー
高畑:次の講義は?
根岸:とってなーい
高畑:(ため息)そうですか。じゃあ、私は研究室に帰りますので
根岸:行っていい?
高畑:ダメです
根岸:先週は誘ってくれたのに
高畑:語弊がありますよ。誘ってはいません。キミが勝手についてきたのでしょう?
根岸:ダメって言わなかったぁー
高畑:困りますよ、あんなことされたんじゃ、僕は大学にいられなくなりますよ
根岸:えー
高畑:えーじゃない
根岸:むぅ
高畑:むすくれても何も出ませんよ
根岸:ちぇー
高畑:パソコンもいれたし、プロジェクターも切ったし、教室の電気も切ったし
根岸:アタシとふたりきりだしー?
高畑:はい、寝ぼけてるなら帰って寝たほうがいいですよっと(ドアを閉める)
根岸:あっ。なんでー!なんでしめるんですかー
高畑:遊んでないで出てきなさい
根岸:研究室行っていい?
高畑:ダメです
根岸:行っていいって言ってくれないと、アタシ、ここから出ない
高畑:はい。じゃあ、カギをしめておきますね
根岸:あーー
高畑:出てきなさい
根岸:研究室……
高畑:用もないのに来る意味がわかりません
根岸:あっ!
高畑:無用な思い付きはいりませんからね
根岸:はーい!せんせー!
高畑:なんですか?
根岸:今日の講義のぉ~、わからないところがあるので~教えてくださぁい!
高畑:……ぐぅ
根岸:ね?
高畑:どこがわからないんですか?
根岸:えっとぉ、せんせーとぉ、アタシのぉ?均衡点Lの座標
高畑:ハイ、バカにするのもいい加減にしなさい。はい、教室を閉めますからね
根岸:はーい
高畑:よし、生徒も教室にいない、電気も消した、カギも閉めた
高畑:僕は教務課に行って、カギを返してから研究室に帰ります
高畑:では…
根岸:…せんせーー……あ、そゆことね!せんせっ!


(第2話へつづく)


根岸:せんせー、アタシ来ちゃった

根岸:ここのカギ、閉めますね
根岸:これで、ふたりきり

根岸:アタシ…
根岸:あ、ダメせんせい…
根岸:何も言わずに近づいてくるなんて
根岸:せんせー、アタシ
根岸:ダメ、首は弱いの…

根岸:そこっ、弱いの知ってて、ダメ…あっ
根岸:せんせー、アタシ、まだ19だけど…
根岸:結婚できちゃう年齢なの

根岸:そんな目で見られたら、アタシ…とけちゃう…
根岸:せんせー

根岸:そんなに強く抱きしめられたら、んっ
根岸:せんせーのこと、もっと好きになっちゃう、あっ

根岸:アタシ、もう、ガマンでき…ない…から

根岸:せんせー
根岸:キス、して?

根岸:ねぇ、せんせー、ここで、キス、し、て?

高畑:なにをやっとるんだね。僕の研究室の前の廊下で、それをやるなと言っただろ、毎回毎回
根岸:い、いつからいたんですかぁ? いるならいるって言ってくださいよぉ~もう~
高畑:今、戻ってきました。
根岸:つづき、してもいいんですよぉー?
高畑:(ため息)
根岸:(吸い込む)アタシ吸ってあげます
高畑:はぁ?
根岸:そんなため息ついたら、しあわせ逃げちゃいますよぉ?
高畑:そうですか、そうですね、いっぱい吸って、君だけ幸せになって、さっさとどっかに行ってください
根岸:えー
高畑:えーはこっちのセリフです
根岸:えー
高畑:研究室に入れないので、ドアから離れてください
根岸:研究室に入れてくれる?
高畑:交換条件ですか?
根岸:いいえ
高畑:ただの願望ですか?
根岸:いいえ
高畑:なんですか?
根岸:研究室に入れてください
高畑:嫌です
根岸:ここで、大声出しますよ?
高畑:お願いの域を突破してますよ?
根岸:脅迫です
高畑:いやいや
根岸:ここで大声出すのと?
高畑:はい
根岸:研究室内に入れてくれるのをどちらを選ぶんですか?せんせ?
高畑:どーせ、研究室内で大声だすんですから、入れませんよ、もう
根岸:えーー、なんでーー
高畑:なんで?じゃないんですよ、また守衛さんを呼ぶ気ですか?
根岸:じゃあ、ここで大声だします
高畑:いいですよ?
根岸:いいんですか?
高畑:どんなセリフで大声出すプランなんですか?
根岸:えっと…
高畑:考えておきなさいよ
根岸:ちょっと待ってぇ
高畑:待ちます。セリフを考えている間に、そうですね、コーヒーでもいれましょう
根岸:あ、いいなぁ
高畑:そこでセリフを考えておいてください、時間はたっぷりありますから
根岸:う~ん
高畑:叫ぶんですよね?効果的なセリフで叫ばないと、もったいないですよ?いいですか?
根岸:それもそうですよねぇ~
高畑:カバンが重いので、一旦中において、コーヒーを淹れておきます、ちょっといいですか、
高畑:あなたの分もコーヒー淹れてあげますからね
根岸:はーい
高畑:じゃあ、コーヒーが入ったら、また、廊下にでてきますので
高畑:そしたら、続きをやりましょう。先生もどんなセリフを君が言うのか、とても楽しみです
高畑:とびきりステキなセリフで、叫んでくれないと、満足しませんからね?いいですか?
根岸:はーい
高畑:じゃ、ちょっと失礼
根岸:ん~、なにがいいかなぁ~、せんせーどんなのが好きかなぁ~
高畑:よし、カギが開いたので、では。ちゃーんと考えるんですよ?
根岸:はーーい!
高畑:…(研究室へ入る)
根岸:どうしよっかなぁ~
高畑:…(ドアを閉める)
根岸:う~ん
高畑:…(カギをしめる)
根岸:…
根岸:…う~ん
根岸:…怒ってる感じがいいのかなぁ?
根岸:…ちょっと泣いてる感じのほうが好きかなぁ?
根岸:それとも、もうちょっと激しい感じのほうが、せんせードキドキします?
根岸:あ。
根岸:あーーー!(ドアを叩く)
根岸:せんせー!(ドアを叩く)
だましたー!
根岸:なんでカギしめてるんですかぁ!
根岸:せんせー!
根岸:無視しないで!
根岸:せんせー!
根岸:…どうして
根岸:…どうして、アタシ、こんなにせんせーのこと好きなのに
根岸:ねぇ!せんせー!
根岸:あ、開いた
根岸:せんせー、あけてくれるんですね
根岸:あ、そんな、いきなり、そんなこと
根岸:ダメですって、廊下、あっ、廊下ですよっ、あっ、んっ
根岸:そんな強く、あっ、
根岸:せんせ、い、あっ、だ、ダメ、そんな、ふうに、され、たら、アタシ、あっ
根岸:せんせー、そこは、あっ

根岸:…ちっ、これでもダメか
根岸:もー!なんでー!無視するんですかぁ!
根岸:(ドアをたたく)聞こえてるんでしょー?!
根岸:せんせー!
根岸:アタシも、せんせーのコーヒー飲みたいぃ!

根岸:あ。守衛さん、どうも……
根岸:え、あ、いえ、講義のプリントを取りに来て、せんせーを待ってるんです。え?
根岸:いやっ!ダメっ!痛いっ!離してっ!痛いっ!
根岸:アタシ、せんせーに、用事が、あって、
根岸:痛いっ、痛いっ、せんせー!助けてっ
根岸:あ、あーーー(遠ざかっていく)


(第3話へつづく)


根岸:あ。守衛さん、どうも……
根岸:え、あ、いえ、講義のプリントを取りに来て、せんせーを待ってるんです。え?
根岸:いやっ!ダメっ!痛いっ!離してっ!痛いっ!
根岸:アタシ、せんせーに、用事が、あって、
根岸:痛いっ、痛いっ、せんせー!助けてっ
根岸:あ、あーーー(遠ざかっていく)
根岸:あーーーーー(小さくなっていく)
根岸:…ぐはぁ

根岸:…
高畑:なにを独りでバタバタしとるんだね。
根岸:あ、せんせー
高畑:守衛さんも来てないし。ずっとそうやってるつもりですか?
根岸:だって…
高畑:不審者に思われますから、コーヒー飲みに入りなさい
根岸:でも…
高畑:入らないんですか?
根岸:だって…
高畑:そこで暴れられるより、マシですよ、ほら
根岸:いいの?
高畑:それも作戦ですか?
根岸:いいえ。作戦なんかじゃない。だって、ぜんぜん相手してくれないんだもん
高畑:こちらの理由もあるんですよ、ほら、入ってください
根岸:はーい
高畑:ちょっと真面目な話があります
根岸:カギ閉めたほうがいい?
高畑:表に、これを貼ってください
根岸:打ち合わせ中?
高畑:いいから
根岸:はい
高畑:座って。はい、コーヒーどうぞ
根岸:…はい
高畑:若いってのはいいですね。元気があって。僕にもねそのくらいの時期がありました
高畑:どうぞ、ミルクもお砂糖も使っていいから
根岸:せんせーは、ミルクとお砂糖は?
高畑:僕はブラックです
根岸:じゃあ、アタシもブラック
高畑:どうもね、君を見ているとね、昔を思い出すんです
根岸:昔?
高畑:ええ。ちょうど君と同じくらい、大学生の頃
根岸:(コーヒーを冷ましている)ふーーふーー
高畑:好きな人がいました。後にも先にも、あの人以上の人は現れていません。
根岸:純じゃん、せんせー
高畑:まぁ、研究が面白いってのもありますが、
根岸:どんなひと?
高畑:ひとつ年下の、同じゼミの人でした
根岸:年下?
高畑:ひとつだけね。
高畑:いつも華やかで、人気者で、明るくて、でも、ふとした瞬間に影を感じる。そんな人でした
根岸:…ステキな人
高畑:正直言うと、どことなく、君に似ています。
根岸:その人とは会ったりするの?
高畑:いいえ。今はもう、どこで何をしているのか、わかりません
根岸:一つ下だから、45歳?
高畑:そうですね、その人は浪人もしていませんでしょうから、44歳
根岸:2つした?
高畑:ボクが1浪していますから
根岸:なんていう名前のひとなの?
高畑:片岡久美子(かたおかくみこ)という名前の人です
根岸:え?
高畑:どうかしたんですか?
根岸:ママ、と同じ。
高畑:またまた、冗談を
根岸:写真、あるの。ママの、見る?
高畑:まぁ、ね、そんなこともあるかもしれませんね
根岸:はい
高畑:……くみこさ、ん
根岸:ママ、アタシの
高畑:ふふふふふ、はははははは、あははははははは、そっかそっか
根岸:どうして笑うの?
高畑:そっか、20年も、経つか、そっか。…そっか
根岸:…せんせ?
高畑:君が、生まれたわけですね
根岸:…せんせ?
高畑:パパはどんな人?
根岸:優しい。アタシのこと大好きだから、毎週金曜日の夜に電話してる
高畑:そっかそっか
高畑:ママは?
根岸:おせっかい。昨日も宅急便で野菜とか送られてきた
高畑:ひとりぐらしをしている娘がかわいくてしかたないんだねぇ
根岸:それは、そうかも
高畑:(ため息)あ~、そっかそっかそっか
根岸:せんせ?
高畑:……
根岸:大丈夫?
高畑:僕は、大学生、大学院、3年くらい企業で研究職にいましたが、また戻ってきて先生をやってます
根岸:うん。知ってる
高畑:ずーっと大学生の気分のまま、今も、変わってない。そんな感じ
根岸:うん
高畑:正直に言いますね?
根岸:う、うん
高畑:今日、僕は、今、やっと、失恋をしました
根岸:……アタシのせい?
高畑:ううん。
根岸:…アタシが悪いの?
高畑:僕はね、やっと、失恋できた。嬉しいんです
根岸:失恋なのに?
高畑:そう、失恋なのに、嬉しいんです


(第4話へつづく)


高畑:僕は、大学生、大学院、3年くらい企業で研究職にいましたが、また戻ってきて先生をやってます
根岸:うん。知ってる
高畑:ずーっと大学生の気分のまま、今も、変わってない。そんな感じ
根岸:うん
高畑:正直に言いますね?
根岸:う、うん
高畑:今日、僕は、今、やっと、失恋をしました
根岸:……アタシのせい?
高畑:ううん
根岸:…アタシが悪いの?
高畑:僕はね、やっと、失恋できた。嬉しいんです
根岸:失恋なのに?
高畑:そう、失恋なのに、嬉しいんです
高畑:ずーっとずーっと好きだったんです。片岡さんが
高畑:だけど、言い出せずにいたし、なんていうか、アイドルを眺めてるくらいの距離感でね
根岸:…アタシ生まれてこなきゃよかったのかな
高畑:ちがうよ。それはちがう。君が生まれて来てくれたから、僕は今、失恋できたんだよ
根岸:でも、せんせー、悲しいんでしょ
高畑:悲しくないんだよ。なんていうか、荷物を降ろせた感じ。わかんないだろうな
高畑:ずーっと思ってはいたけれどね、僕には誰かを幸せにできるなんて
高畑:そんなこと一度も思ったことがない。だから、独りで生きてきたし
高畑:なんだったら、ずっと独りでいいとも思ってる
根岸:そんなことないよ
高畑:ありがとう。まぁ、根っからの卑屈なヤツなんだよ、僕はね
高畑:だから、研究に没頭して、世界から離れて、そうやって殻に閉じこもって生きてきた
高畑:だから、君が生まれて来てくれたことがとても幸せで嬉しいんだよ
根岸:うれしいの?
高畑:人生で、一番好きだった人が、幸せな人生を送っている
高畑:最愛の人であるパパさんに出会って、娘がいて、
高畑:その娘は、こんなにも、天真爛漫で、元気に、生きている
高畑:その人の、愛情の塊である君から、
高畑:君のママが、元気で幸せで、おせっかいな母親をやってると知ることができた
根岸:せんせ…
高畑:僕はね、よかったって思う。僕にはできない幸せを手に入れてくれたことがうれしいんだよ
根岸:アタシも幸せになりたい
高畑:僕は君の幸せを応援するよ
根岸:アタシ、先生と恋人になりたい
根岸:アタシの恋人は、大学教授のせんせいなの!
高畑:ありがとう。そう言ってもらえるのはうれしい。けどね。
根岸:けど?
高畑:僕は、過去を思い出したくないとも思ってる
高畑:君は、僕の好きだった人とそっくりだ
高畑:うん、やっぱりそっくりだ。だから、僕には、無理なんだよ
根岸:せんせー、質問
高畑:なんだい?
根岸:せんせーは、恋人をつくるんですか?
高畑:もう、つくらないよ。今、失恋したばかりだしね
根岸:じゃあ、いいじゃん!
高畑:じゃあ、って。僕は結婚するつもりもないよ
根岸:だったら、いいじゃん
高畑:いいじゃんってなにが?
根岸:アタシもせんせーみたいな失恋がしたい!
高畑:え?急に何を言い出すんだい?
根岸:アタシはせんせいが好き。だから、恋人になってほしい
根岸:せんせい以外考えられないの
高畑:まだ若いからだよ
根岸:いいの
高畑:よくないよ。もっといい人がいるよ
根岸:うん。せんせいより、もっともっといいひとがいる。
高畑:そうだね
根岸:だから、本当にせんせいを超えるひとと出会えるか、試してみたいの
高畑:なるほど
根岸:需要があって、供給がないと、市場が成立しないんでしょ?
高畑:そうだね
根岸:アタシは、市場が成立しないまま、永遠に先生を思って、恋し続けて、おばあちゃんになっちゃう
高畑:なるほど
根岸:それでもいいの?アタシ、幸せになれない
高畑:でも、僕はたいした人間じゃない。君が思うほど、イイ人でもない
根岸:それは、アタシが決めるの。たいした人間じゃなかったら、大学卒業より先に卒業できるでしょ?
高畑:あははははは、確かに。いい仮説だ。
根岸:先生は大したことがないって言う。でも、均衡点がわからないから、確かめようがないの
高畑:なるほど
根岸:一度形成した均衡点が、長続きするかどうかは?
高畑:わからないね
根岸:アタシが先生を好きでいられる均衡点Lが、卒業式までもつかどうかはわからない
高畑:僕が恋人にならないと言ったら?
根岸:せんせーの年より、もっと先まで片思いできる自信しかないもん
高畑:それはよくないな
根岸:アタシ、せんせーみたいになっちゃう
高畑:あはは、それはよくない
根岸:せんせー、アタシの恋人になってよ
高畑:こんなのでいいの?
根岸:アタシ、頑固だから
高畑:どうやらそうらしいね
根岸:誰に似たと思う?
高畑:パパ?
根岸:ううん。ママに似て、頑固なの
高畑:それは困ったなぁ。でも、君の姿の向こうに、ママのことを思ってしまうかもしれないよ?いいの?
根岸:それでもいい
高畑:僕の負けだ
根岸:いいの?
高畑:君が飽きるまで付き合ってあげるよ
根岸:ねぇせんせ?アタシ、今、すっごく幸せ
根岸:だって、アタシの恋人は大学教授のアナタだから!

*** おしまい ***

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