御台本

御台本 - Written by oda

恋とお酒と先輩と
【登場人物】 【●性別】 【登場人物の概要】
真琴 女性 後藤真琴(ごとうまこと)。大学4年生。誰にも言えない恋心を抱えている。
信也 男性 高橋信也(たかはししんや)。大学1年生。言い出せない憧れを抱えている。

あらすじ

サークルの仲間との宅呑み。
0:時計の針が深夜の2時をまわったころ。
0:残ったのは、先輩と僕のふたり。

恋とお酒と先輩と

【真琴の家。マンションの一室にて】
(ふたりとも、ほかの仲間を起こさないように静かに話している)
真琴:あ、山岡君も寝ちゃったね。
信也:落ちましたね。
真琴:5人で呑んで、
信也:3人寝落ちて。
真琴:寝てもいいのよ?隣の部屋にお客さん用のお布団も敷いてるよ?
信也:まだ、平気です。ウィスキーとってください。
真琴:はい。
真琴:あ、炭酸とってこようか?
信也:いや、大丈夫、これ、使い切ります。
真琴:あ、そうだそうだ。(立ち上がって台所へ)
信也:いいですよ、先輩。
真琴:えっと、確か……
信也:(ウィスキーの炭酸割りをつくる)あ、ちょっと濃すぎたかな。
真琴:あったあった。
信也:まぁ、いっか。
真琴:はい、氷。
信也:あ、ありがとう、なんかごめん。
真琴:いいのいいの、ついでついで。
真琴:こっち。隣座って良い?
信也:うん。いいですよ、真琴先輩の家だし。
真琴:チーズ持ってきた。
信也:あ、カマンベールじゃん。
真琴:嫌いじゃない?
信也:時々、買って食べてます。
真琴:よかった。田村ちゃんカマンベール苦手って言っててさ。
信也:あぁ、それで冷蔵庫に?
真琴:うん。嫌いなもの置いておいてもね。
信也:あんなにいいっぱい買ってきたのに、ぜんぶ食べちゃいましたね、オードブル。
真琴:大学生5人集まったら、あっという間よ。
真琴:ねぇ、このパッケージあけて?
信也:いいですよ。
真琴:チーズ買ったりするの?
信也:うん買うよ。はい、開きましたよ、どうぞ。
真琴:ありがと。あ、切れてるの買えばよかった。
真琴:切ってこようかな…。
信也:え?別にいいじゃん、みんな寝てるし、ちぎっちゃえば、手で。
真琴:気にしない?
信也:うん、ぜんぜん。
真琴:どこからちぎろうかな。
信也:ボク、時々やるんですけど、これ丸のまま、かぶりつくの好きなんですよ。
真琴:なにそれ?贅沢ぅ。
信也:やったことない?
真琴:うん。やったことない。これ、ガブッと?
信也:男の一人暮らしなんてそんなもんですよ。
信也:学校帰りにスーパーで買ってきた袋の中から、
真琴:うん
信也:冷蔵庫に入れることなく、袋開けて、がぶ。
真琴:この大きさを?
信也:そ。安っすいワインを、いつものマグカップに入れて、カマンベールチーズをがぶり。
真琴:それ晩御飯とか言うんでしょ?
信也:うん。ゲームしながら。
真琴:もーダメだよ、ちゃんと食べるもの食べてから、おやつにしないと。
信也:あはは、姉ちゃんと同じこと言う。
真琴:そりゃ言いますよ。 真琴:サークルの大切な後輩が、そんな乱れた食生活してたらね?
信也:でもね、それ一個丸っと食べたら、けっこう、お腹にキますよ。
真琴:まぁね、1個まるごと食べるものではないしね。
真琴:半分こ、する?
信也:ひとくちガブッといってみたら?
真琴:私が?
信也:うん。試しに。
真琴:くちに入んないよ。
信也:そんな、ヘビみたいに、丸っと飲み込めって言ってませんって
信也:ひとくちでそれ1個全部いったら、ほっぺ、こーんなんなりますよ。
信也:(頬を膨らませて)んーーーー。って
真琴:もう、すぐそうやって茶化す。
信也:あははは
信也:(ひょうきんな山岡先輩を真似て)
信也:『さぁ、今夜も始まりました、
信也:『カマンベールの
信也:『カマンベールによる
信也:『カマンベールのための祭典、
真琴:(笑)ちょっとぉ
信也:『カマンベールチーズ
信也:『ひとくちチャレンジ、
信也:『カマンベイベーのお時間です!
真琴:山岡君の真似しないでよ(笑)
信也:『エントリーナンバー、
信也:『8億6千4百飛んで7番、
真琴:選手多すぎ
信也:『ボイコネ大学心理学部4年生
信也:『後藤真琴の挑戦です。
真琴:やるの?
信也:『さぁ、今の意気込みを
真琴:どういう競技よそれ。
信也:『「どういう競技よ」
信也:『秘めた闘志をメラメラと燃やしております。
真琴:ガブッといっていいの?
信也:うん。
信也:『さぁ、ただ今の世界記録は、
信也:『ボイコネ大学心理学部4年生
信也:『山岡たけしの、
信也:『76267.2マイクロメートル。
真琴:え?どういう記録?
信也:7センチ6ミリくらい。
真琴:え?これ8センチ無いよね。
信也:山岡先輩なんで。
真琴:あははは
真琴:山岡君ならひとくちでいきそう。
信也:さぁ、グリーンフラッグが振られました、
信也:追い風48メートル
真琴:吹き過ぎ。
信也:『さぁ、ひとくちで飲み込めば世界記録です。
真琴:無理無理
信也:いいよ、どうぞ。
真琴:(ひとくちかじる)っあむ。うんうん。
信也:もー、世界記録かかってたのに
信也:おいしい?
真琴:うん。
真琴:おいしいおいしい。
信也:でしょ?
真琴:これもぐもぐしながらお酒飲みたくなるね。
信也:あ、先輩のグラスは?
真琴:あ、あっち、でも飲み干しちゃった。
信也:これ飲む?ウィスキーだけど。
真琴:いいの?
信也:嫌じゃなければ。
真琴:もらうね。ありがと。
信也:いいでしょ?
信也:カマンベール、かぶりつくの?
信也:好きなんですよね~、これ。
真琴:いいかも。
真琴:なんかいけないことしてる感じ。
信也:いいでしょ?実家でやったら、姉ちゃんにぜったい怒られる。
真琴:どこで覚えるの?
信也:いや、切るのめんどくさくなっただけで。
真琴:あ~、やっぱ信也はそうなんだなぁ。
信也:なに?
真琴:なんか、普段から、なんていうの?
真琴:そういう固定概念ぶちやぶるみたいなの、
真琴:アイデアマンって、田村ちゃんも言ってたけど
信也:言ってましたね。
真琴:カマンベールの食べ方ですら、
真琴:なんか感心しちゃう。
信也:いや、めんどくさがりなだけですけどね。
真琴:信也も食べなよ?
信也:いいの?平気?
真琴:うん、ぜんぜん平気。
信也:(ひとくちかじる)
信也:っあむ。うんうん。
信也:うまい。これこれ。
真琴:はい、お酒。
信也:うん。ありがと。
信也:(ひとくち飲んで、ため息)
信也:なんか、あっという間ですね。
真琴:ん?
信也:久しぶりにみんなで遊んで、
信也:真琴先輩ん家で酒飲み始めて。
真琴:日付変わったぐらいから、
真琴:ひとりずつ眠って。ね?
信也:ね。
信也:結局、このふたりが最後まで残る。
信也:みたいなの、定番になってますね。
真琴:ね。
信也:先輩はさ、
真琴:ん?
信也:就職決まったじゃないですか?
真琴:うん、なんとかね。
信也:社会人になったらさ?
真琴:うん?
信也:こうやってみんなで集まるのも、
信也:できなくなるのかな?
真琴:どうしたの?
信也:いや、なんかさ。
真琴:どうなるかわかんないけど、
信也:うん?
真琴:ゆるーくつながってれば、また、一緒に呑めるよ。
信也:ですよね。
真琴:なーに?しんみりしちゃって?
信也:いや、なんとなく。
真琴:かわいいやつだなぁ、もう。
信也:そうやってすぐ頭ガシガシする。
真琴:私さ、弟欲しかったんだよね~。
信也:弟キャラだと思って油断してると、
真琴:なに?
真琴:油断してるとどうなるの?
信也:ボクもさ、一応男ですから?
真琴:うん。チーズ食べる?はい、あーん。
信也:そうやって。
真琴:人間って不便よね?
信也:不便?
真琴:ひとりひとりの気持ちなんてね、わかんないよね?
信也:そうですね~。
真琴:みんなも気持ちよさそうに眠ってるけどさ、なーに考えてんだかね。
信也:真琴先輩?
真琴:なに?
信也:真琴先輩は、好きな人いないんですか?
真琴:ふふふふふ
信也:そうやってすぐはぐらかす。
真琴:お味噌汁つくったら飲む?
信也:あ、うん、のみたい。
真琴:ちょっと台所行ってくる。
信也:あ、俺も一緒に行っていい?
真琴:うん、いいよ、おいで。
信也:うん。
信也:(二人で台所へ)
信也:真琴先輩のさぁ、お味噌汁ってさ
信也:なんか、おいしいんだよね。
真琴:変なものは入れてないよ?
信也:どうやって作ってるのかなぁ?って?
真琴:まずは、お水を鍋にいれて~、わかします~。
信也:それはわかるって。
真琴:あ、換気扇回してもらっていい?
信也:あ、これね、
真琴:信也?
信也:なに?
真琴:今日のお味噌汁なにがいい?
信也:なにって?なにがあるんです?
真琴:えっと、わかめと、だいこん、豆腐、お揚げさんと、なめこもできるよ?
信也:なめこがいい。
真琴:そしたら、お湯にだしの素入れて、
真琴:そこにささっとこれを、水でぬめりとって、煮ちゃえばいい。
信也:あ、このチーズ全部食べちゃいそう。
真琴:あ、ひとくちちょうだい。
真琴:手濡れてるから、
信也:はい、あーんして
真琴:あーん。うん、おいしい。
信也:あと、全部食べちゃっていい?
真琴:うん。
信也:お味噌なに使ってるの?
真琴:これ実家から送ってもらってる。
信也:あ~、それかぁ。
真琴:うん。自家製。
信也:だからかぁ。
真琴:だから?
信也:なんか、同じようなのがお店に無くって。
真琴:分けてあげようか?
信也:ん~、分けてもらうっていうか、
真琴:お味噌汁、信也にずっと作ってあげよっか?
信也:うん。
真琴:バーカ。
信也:えー、つくってほしいじゃん。
信也:おいしいから。
真琴:おいしいって言ってくれるのはうれしいけどね。
真琴:あ、お味噌汁用の、お椀出して。
真琴:そこの、
信也:これ?
真琴:えっとねぇ、その右のちょっと大きめのほう。
信也:こっち?
真琴:うん、そっち。
信也:さっと洗うね。
真琴:うん。
信也:真琴先輩?
真琴:火を止めてっと。
信也:ふきんで拭ったほうがいい?
真琴:外側だけ、ちょっと拭いて?
信也:これ使っていいい?
真琴:うん。
信也:はい、
真琴:お箸、そこに刺さってるの
信也:うん。
信也:朱色の真琴先輩の?
真琴:うん、それ私の。
真琴:はい、できあがり~。
信也:鍋、俺洗うよ?
真琴:ううん、まだ熱いから、水出して、置いておいて。
信也:はーい。
真琴:はい、どうぞ。
信也:はい、お箸。
真琴:やけどしないでね?
信也:ふーふー、(飲む)
信也:あー、これこれ。
真琴:美味しそうに飲むね。
信也:胃にしみる~。
真琴:おじさんくさいなぁ、もう。
信也:真琴先輩のお味噌汁、
信也:すっごい好き。
真琴:はいはい、ありがとね。
信也:どうしたの?
真琴:ふーふー、(飲む)
真琴:(大きくため息)
信也:先輩?
真琴:ん?
信也:先輩の卒業式までには、さ、
真琴:ん?
信也:また、みんなで呑もうね。
真琴:うん。いいよ。
信也:真琴先輩?
真琴:なに?
信也:やっぱりおいしい、お味噌汁。
真琴:そのくらいだったら、信也なら、いつでもつくってあげるって。
信也:うん。ありがと、真琴先輩。
真琴:……。
信也:あーー、おいしい。
真琴:よかったね。
信也:うん。


*** おわり ***


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