御台本

御台本 - Written by oda

友とアタシと卒業と
【登場人物】 【●性別】 【登場人物の概要】
女性 田村茜(たむらあかね)。大学2年生。信也には、茜姉(あかねぇ)と呼ばれている。ふと、自分の心の変化に気づいてしまった。
信也 男性 高橋信也(たかはししんや)。大学1年生。言い出せない憧れを抱えている。

あらすじ

サークルの仲間との宅呑み。
バイト断れなかった買い出し担当のアイツ。
時計の針が23時になってようやく合流できた。
2月いつものメンバーで呑む最後の呑み会の日、先輩が待つ家まで向かうのは、アイツとアタシのふたりだけ。

友とアタシと卒業と

茜:お・そ・い。
信也:あ、居た。
茜:あのねぇ、「あ、居た」じゃなくて。
信也:ちっせぇから見逃すところだった。
茜:うっさい。
茜:あのねぇ。
信也:あか姉ぇ待った?
茜:待ってた。
信也:なんで?
茜:なんで?じゃないわよ。
茜:バイト23時に終わるって言うから、
茜:その時間に合わせて駅まで出てきてやったってのに。
信也:俺、真琴先輩ん家わかるよ?
茜:(ため息)
茜:アンタはさぁ、
信也:ん?
茜:あーあ、そーゆーとこよ?そーゆーとこ。
信也:そーゆーとこ?
茜:けろっとした顔しやがって。
茜:あーうざ。
信也:いこうよ。
信也:あ、こっちの袋持って。
茜:なんで?
信也:そのために駅まで来てくれたんじゃないの?
茜:女子に持たせる気?
信也:はい、こっち。
茜:は?
信也:重いほう。
信也:ペットボトルがね、
信也:2リットル4本と、
信也:ビールと、チューハイとかの追加分。
茜:アタシをなんだと思ってるわけ?
信也:あはは。
信也:冗談だよ。
信也:えっとね、
信也:あか姉ぇにはね、はい、
信也:どうぶつビスケット。
茜:(怒って)んあ?
信也:あー、喜んでる喜んでる。
茜:(怒って)むぅ。
信也:そんな上目づかいで喜ぶなよ。
茜:子ども扱いすんなし。
信也:もう、しかたないなぁ。
信也:きっとそう言うと思って、
信也:はい、こっちもどうぞ。
茜:(喜んで)え?マジ!
信也:どうぶつビスケット、
信也:期間限定!
信也:発酵バター風味!
茜:(嬉しそうに)うわぁぁぁあ!
信也:どう?
茜:両方くれるの?
信也:うん。
茜:いや、これはうれしい。
信也:だと思った。
信也:だからね、
茜:うん。
信也:右手に、ピンク色の普通の味持って。
茜:うん。
信也:左手に、金色の発酵バター味持って。
茜:……うん。
信也:他の買い出しは俺持つから。
茜:……
信也:似合うわぁ。
茜:……
信也:いけるいける!
信也:まだ、小学生って言ってもばれないって。
茜:うるせぇ!
信也:ダメだって暴れちゃ。
茜:うるせぇぞ!
信也:あかねちゃーん、公共の場ですからねぇ~。
茜:てめぇぶっ殺すぞ。
信也:じゃあ、ビスケットいらないってこと?
茜:……むぅ。
信也:いるの?
茜:欲しい。
信也:じゃあ、はい、ちゃんと言って?
茜:な、なにを?
信也:「どうぶつビスケット、欲しいです」って
茜:ヤダ。
信也:じゃあ、俺が食うから没収。
茜:やーだ!
信也:じゃあ、ちゃんと言ってみ?
茜:ヤダ。
信也:ふはははっは
茜:なに笑ってんだよ!
信也:イヤイヤ期かよ。
茜:ちがうもん。
信也:ほら、どうぶつビスケットこっちの袋に入れて。
茜:とらない?
信也:とらないよ。
茜:ちゃんとアタシの?これ?
信也:いいから入れて。
信也:こっちのお菓子ばっかりの軽いほう持って、かさばるから。
茜:うん。
信也:ほら、行こう。
茜:いっぱい買ってきたね。
信也:店長に言ったらさ、
信也:「おうおう、先輩卒業か。
信也: 値引いてやるから、レジで呼べ
信也: せっかくの追いコンだからな」って。
茜:追いコン?
信也:追い出しコンパ。の略らしい。
信也:レジ打ちながらさ、
信也:「俺が大学生の頃はな~」って。
茜:あ~、なるほど、
茜:店長の長話を耐えた報酬ってことね。
信也:うん。
信也:あと、肉部門のチーフから、
信也:良いお肉を安くもらってきた。
茜:さすが!
茜:やるじゃん!買い出し担当!
信也:まぁね。
信也:スーパーのバイトで良かったって思った。
茜:うん。
信也:どうぶつビスケットも買えたし。
茜:ありがと、信也。
信也:どうしたの?
信也:めずらしく、素直じゃん?
茜:うっさい。
信也:どうぶつビスケットすげぇな。
茜:そーやってすぐ子ども扱いする!
信也:えー、こどもじゃん?
茜:もうすぐハタチだもん。
茜:1個上の先輩なんだから少しはうやまえ!
信也:え?あーそうだっけ?
茜:クソ信也のくせに
信也:だって、3月生まれでしょ?
信也:俺、4月生まれだし。
茜:うるせーぞ信也!
信也:1ケ月、いや、20日くらいしかちがわないじゃん?
茜:それでもな!
茜:この3月と4月には、
茜:おおきなおおきなおーーーーきな、
茜:差があるのだよ。ふんっ!
信也:ちいさいのがなんか言ってる。
茜:んもーーーー!
信也:お菓子の袋振り回すなって!
茜:んもーーーー!信也のバカぁ!
信也:どうぶつ割れちゃうよ!
茜:あ、そうだった。
信也:あーあ、キリンさんの首が!
茜:むぅ
信也:あーあ、ぞうさんのお鼻が!
茜:むぅ
信也:ゴリラさんのアレが!
茜:アレってなによ?
信也:オスのオス?
茜:バカ言ってんな!
信也:え?わからないならちゃんと言ったほうがいい?
信也:ぺ?
茜:てめぇ、パワハラで訴えるぞ!
信也:パワハラじゃねぇよ。
茜:うるせぇ、セクハラだからな!
茜:それ以上言うなよ!
信也:ふははははは
信也:なんでそーゆーとこだけ、
信也:センシティブに弱いんだよ。
茜:うるせぇ!
茜:こっちは、その、あの、あれだ!
茜:諸事情考慮してやってんだよ!
茜:んったく、
茜:信也はそーゆーとこ、
茜:ホント気が利かないっていうか、
信也:あぁ、ごめんごめん、
茜:もう。
信也:乙女だったね、あか姉ぇ。
茜:そーだぞ!
茜:ちゃんと配慮しろ、配慮を。
信也:はいはい。
信也:あ、ちょっと待って。
茜:ちょっと、どうしたの?
信也:自販機。
茜:このあと飲むんだよ?
信也:待ってって。
茜:もー、早く行こうよ。
信也:はい、あったかいの。
茜:は?
信也:はい、ポケット入れて、
信也:あったかいから。
茜:あ、ありがとう。
信也:お茶なら飲むでしょ?
茜:なんかごめん。
信也:いや、待たせたから。
茜:ありがと。
信也:さ、行こう。
茜:うん。
信也:真琴先輩ん家で待ってればいいのに。
茜:アンタ、知らないからそーゆーこと言えるんだよ。
信也:なにを?
茜:真琴先輩と、山岡ゴリラ。
信也:あぁ。
茜:知ってたの?
信也:仲良いし。つきあってたんでしょ?
茜:ん~、付き合ってないけど、
茜:そーゆー関係だったことがあるって。
信也:そーゆー関係って?
茜:そーゆー関係は、そーゆー関係よ。
信也:そーゆー関係って?
茜:だから、そーゆー関係は、
茜:そーゆー関係ってこと。
信也:そーゆー関係って?
茜:しばくぞ。
信也:あ~、なるほど、
信也:しばく、しばかれるの、
信也:そーゆー関係。
茜:ちがうから。
信也:あか姉ぇはなんでも知ってるね。
茜:てめぇ、うるせぇな。
信也:そっか。やっぱり、そっか。
茜:知らなかった?
信也:別に、過去がどうとか、
信也:そういうのは興味ない。
信也:今も、先輩たちは仲良いし。
茜:なんとも思わないの?
信也:なんともって?
茜:「なんとも」は「なんとも」。
信也:ん~。
茜:そういうこと考えないの?
信也:あか姉ぇは、考えるの?
茜:そりゃ、まぁ。
信也:好きなら好きって言えばいいじゃん。
茜:それは!
茜:………そうかもしれないけどさぁ。
茜:だって、山岡ゴリラ、
茜:ずーっと、真琴先輩のこと好きなんだもん。
茜:うぜぇもん。
信也:うざいのは、真琴先輩が?
茜:ちがくて、
茜:山岡ゴリラが、ずっと、もやもやしてるくせに、
茜:別の女に手だしたりして、
茜:なんか、ぐずぐずしてるのが!ってこと。
茜:はっきりしろや!くそゴリラ!
信也:なんで?
茜:そりゃだって、
茜:はっきり告白して、真琴先輩にフられて、
茜:先に、忘れてもらわないと、
茜:もし、アタシが告白して、
茜:付き合えたとしても、
茜:ずっと、モヤモヤしっぱなしで居られたら、
茜:アタシ、永遠の二番手じゃん。
信也:あ~。
茜:そんなの嫌だし、
茜:うざくね?
信也:うざいね。
茜:ゴリラはゴリラで良い人だけど。
信也:うん。
茜:こっちまでモヤモヤしてくるから、
茜:なんか、もう、さっさと卒業しろよ!って思う。
信也:……。
茜:卒業していなくなれば、
茜:アタシだって、踏ん切り着くのにさ。
信也:どこが好きなの?
茜:え?
信也:山岡先輩の?
信也:どこが好きなの?
茜:え?
信也:いやいや、「え?」ってなに?
茜:え?……なんとなく。
信也:なんとなく?
茜:いや、待って。
茜:待って待って待って。
信也:どうしたの?
茜:いや、待って。なんでもない。
信也:あか姉ぇ?
茜:えーー、うざい。
信也:は?
茜:アタシさ?
信也:うん?
茜:なんでゴリラのこと好きなの?
信也:いや、知らんし、
信也:俺にきくなよ。
茜:え?
茜:いや、待って。
信也:待ってるよ。
茜:整理するから待って。
信也:うん、とりあえずまだ着かないから、
信也:歩きながら整理してもろて。
茜:うん。
信也:あ、そうそう、知ってたら聞きたいんだけどさ。
茜:うん。
信也:なんで、「山岡たけし」だったの?
茜:あぁ、本名「山岡こうじ」なのにってこと?
信也:うん。
茜:文字間違えたらしいよ。
信也:え?
茜:なんか、別のサークルが進行表つくったときに、
茜:「山岡たけし」って書いてたらしいのよ。
茜:配布物ももう、500部以上印刷してあってさ。
信也:うん。
茜:それで、その日はっていうか、
茜:まぁ、さらっと「山岡たけし」で1日やったらしいのさ。
信也:うん。
茜:訂正するのも面倒というか、相手に言い出せなくて。
信也:あぁ、
茜:「名乗るの最初の挨拶だけだし」って。
茜:そーゆーとこ、アイツ、
茜:ゴリラなのに繊細でさ。
信也:うん、山岡先輩らしいけど。
茜:んで、ああいう司会?っぽいことうまいから
茜:呼ばれるたびに、「山岡たけし」って書かれてたらしくて
茜:まぁ、タレントじゃないから、
茜:クチ伝えで、そういうアレがいくじゃん?
信也:そうだね。
茜:誰も疑わないじゃん?
茜:「ひらがなで良いんですかね?」
茜:まぁ、本名はそもそもちがいますけど、
茜:「たけし、ってひらがなでいいですよ」って。
信也:あ~、言いそう。
茜:だから、芸名みたいな感じで使ってるんだって。
信也:あ~、なるほど。
茜:まぁ、本名より、芸名みたいなのがあったほうが、
茜:言うても、ちょっとうまい素人学生だから。
信也:まぁね。
茜:本人も、なんだかんだ気に入ってるって言ってた。
茜:偶然出会った名前って。
信也:へぇ~。
信也:そういうぬるい感じとか好きなの?
茜:は?
信也:ゴリラ先輩の、
信也:ゆるーく「まぁいいか」みたいなトコとか。
茜:いや、嫌い。
茜:だって、ちがうならちがうって言えばいいじゃん?
茜:ハッキリさ、山岡たけしじゃなくて、
茜:山岡浩司(こうじ)です。って。
茜:なにが、印刷してあったからとか、
茜:言われるがままに流されてとか、
茜:偶然もらった名前だから、とか。
茜:あーーー、うぜぇ!!
茜:って感じ。
信也:……はぁ。
茜:うん。
茜:ねぇ?信也?
信也:なに?
茜:どこが好きなんだと思う?
信也:ん?
茜:だから、アタシが、山岡ゴリラのどこを好きなんだと思う?
信也:知らんし。わかんないって。
茜:いや、あのアレ。
信也:なに?
茜:信也から見て、アタシが山岡ゴリラのこと好きそうなトコ。
信也:えーーー、ムズイ。
茜:教えて!
信也:俺から見てってこと?
茜:うん。
信也:えー、ゴリラだからじゃね?
茜:は?
信也:あか姉ぇもさ、中身ゴリラじゃん?
茜:は?
信也:表面は、小柄で、センスも良いから、
信也:スカートとかかわいい感じにまとめてるし、
茜:うるせぇよ?
信也:「しゃべる前までは好きでした」みたいな、
茜:あぁ、夏にね。
信也:そんな感じの他校の男子いたじゃん?
茜:まぁ、確かに。
信也:っていうか、
信也:あか姉ぇの中身ゴリラじゃん?
茜:おい?
信也:俺ら会話してたら、
信也:他校の人とか、ビビッてたりするじゃん?
茜:あ、まぁ、そうね。
信也:ゴリゴリのゴリだから、
茜:おい?
信也:だから、俺から見たら、
信也:ゴリラが、ゴリラになついてるっていう感じ?
茜:おい。
信也:あ、ごめん、正しくは、
信也:ゴリラ・ゴリラ・ゴリラが、
信也:ゴリラ・ゴリラ・ゴリラに、
信也:ゴリラ・ゴリラ・ゴリラしてるって感じ?かな?
茜:学名で言うなし、
茜:なんだよ、ゴリラ・ゴリラ・ゴリラしてるって。
信也:ニュアンスわかんない?
茜:ニュアンスはわかるから、うぜぇって言ってんの。
信也:伝わってんじゃん。
茜:同類ってニュアンスはね、
茜:確かにそうかもな~って、思った。
茜:あーあ、アイデアマン高橋うぜぇ。
信也:聞いてきたのそっちじゃん。
茜:うん。
茜:妙に腑に落ちたっていうか、
茜:あー確かにそんな感じ。って思った、今。
信也:わかったんならそれじゃん?
茜:かもね~。
茜:ゴリラが、ゴリラに、
茜:ゴリラ・ゴリラ・ゴリラしてただけか~。
茜:もう、いっかな~。
茜:あのゴリラ卒業するし。
茜:アタシも卒業しよーかなー。
信也:いいの?
茜:いいの?って?
信也:思いを伝えるとか、
信也:今晩の呑み会でやります?
茜:あー、そーゆーんじゃないから。
信也:ん。わかった。
茜:なに?把握したの?
信也:なんもしなくていいんでしょ?
茜:うん。
信也:手伝う必要があるときは、
信也:俺が忙しいとかおかまいなしに、
信也:手伝ってっていうじゃん?
茜:うん、まぁ、そうね。
信也:だから、別に、いいんだ。って思っただけ。
茜:ありがと。
信也:いや、ふつーじゃん。
茜:いいの、ありがと。
信也:ん。
信也:あ、あそこ、ベランダでタバコ吸ってんのかな?
茜:1、2、3、4、5、6……あぁ、
茜:あそこ真琴先輩ん家のベランダっぽいね。
信也:ふたりいるね、
茜:良く見えるね。
信也:あか姉ぇもコンタクトの時なら見えるよ。
茜:メガネにしなきゃよかったかな。
信也:ちょっと電話してみる。
茜:いいじゃん、上がろうよ。
信也:今日で終わりだから。
茜:え?
信也:(電話をかける)
信也:もしもし?真琴先輩?
信也:ふたりでタバコ吸ってる?ベランダで、
信也:ベランダにいる?
信也:下見てよ?
信也:うん、下。
信也:今、ついたー。
信也:あか姉ぇ、手振って、あそこ、
茜:あ、あれやっぱりそうだったんだ。
信也:うん、わかった。
信也:(電話をきる)
茜:手振ってる。
信也:見えてるのかな?
茜:真っ暗。
信也:あ、山岡先輩も手振ってる。
茜:タバコの赤いのちらちらみえるね。
茜:(信也にだけ聞こえるように)
茜:バイバーイ。って感じ。
茜:せんぱーい、ありがとうございました~。
信也:(茜にだけ聞こえるように)
信也:ばいばーい。
信也:卒業おめでとー。
茜:それ、アタシに言ってるでしょ。
信也:あ、ばれた?
茜:あのさー、
茜:そーゆーとこずるいよ。
信也:気づくのあか姉ぇじゃん?
茜:追い出しコンパかぁ。
茜:うまいこと言うね、
茜:追い出しちゃうんだもんね。
茜:さっさと卒業しやがれって。
信也:気に入った?
茜:そのとおりだもん。
茜:これも、失恋なのかな?
信也:あか姉ぇの卒業式って感じなら
信也:それは、それでいいんじゃないの?
茜:うぜぇ、こいつ。
信也:なんで?
茜:だって、
茜:んあーー、もう、
茜:はいりこんでくんな。
信也:なに?
茜:信也がうぜぇって話。
信也:はいはい、うぜぇっすよ、うぜぇっす。
茜:信也はどうするの?
信也:どうするって?
茜:真琴先輩のこと、好きなんでしょ?
信也:うん。
信也:ちゃんとさ、
信也:「好きだった」んだと思う。
茜:……信也?
信也:大学生になってさ、
信也:俺が1年生で、真琴先輩が4年生で、
信也:この一年間だけでも、
信也:近くに居られて、
信也:いいなぁって思えて、
信也:サークルも楽しくて。
信也:それでいいんだと思った。
茜:……なにそれ。
信也:なにそれって?
茜:……軽やかに言いやがって。
信也:追い出しコンパだよ、今日が。
茜:うわーーーー、寒っ。
信也:上がるか。
茜:信也はさ、心の中から追い出せんの?
茜:真琴先輩のこと。
信也:ん~、わかんないけど、
信也:恋人同士になる現実のほうが想像できない。
信也:っていうか、
信也:みんなで一緒に呑んで、さわいで、
信也:笑ってってのができなくなることのほうが、
信也:心の中で大きく占めてる気がする。
茜:そっか。
信也:「憧れ」っていう言葉は、
信也:こういうときに使うのかなって思ったりしてる。
茜:あんたはさ、言葉がたくみだね。
茜:こっちは正体がわからなくて、
茜:言葉にできないまんま、
茜:モヤモヤしっぱなしなのに。
信也:3月の卒業式終わって、見送って、
信也:真琴先輩もここから引っ越して、
信也:社宅に入るって言ってたし。
信也:ここに来ることが無くなったら、
信也:ちゃんと思い出になるんだと思う。
信也:そんな感じかな。
茜:はぁ~、そうですか。
信也:あか姉ぇはどう思う?
茜:どう思うって…。
茜:アタシは、
茜:アンタのさ、
茜:アンタのはく言葉が、
茜:言葉がどかーんって響くんだけど
茜:どうしたらいいわけ?
茜:どんな顔して、上にあがればいいんだろ。
信也:アレだよ、
茜:ん?
信也:笑えばいいと思うよ。
茜:うぜぇーーーー!
信也:ゴリラはゴリラなりに、
信也:笑えばいいと思うよ。
茜:うっせーぞ。
茜:バーカ。
茜:よし、真琴先輩んとこいくよ。
信也:うん、ゴリラ先輩トコ行こう。
茜:608っと、
茜:真琴せんぱーい!
茜:オートロックあーけーてー!
信也:あいたあいた。
信也:エレベーター呼ぶの押して。
茜:うん。
茜:ねぇ、信也?
信也:なに?
茜:3月のアタシの誕生日さ、
茜:うちで、一緒にケーキ食べない?
信也:あーいいね。
茜:今んとこ、アンタだけだから。
信也:誘えるヤツ?
茜:ううん、誘いたいヤツ。
信也:わかった、あけとく。
茜:うん。あ、エレベーター来た。
茜:6階っと。
茜:あともうちょい、荷物重いけどがんばれ。
信也:うん。
茜:扉閉めるよ~。
信也:(エレベーターの扉が閉まる)
信也:(エレベーターが上昇していく)
信也:うん。
信也:あー腹減った。
信也:歩いてここまで来るだけで、結構冷えたね。大丈夫?
茜:うん、大丈夫。
茜:ポケットのあったかいお茶、大活躍。
信也:よかった。
茜:(エレベーターが6階に到着)
茜:(扉が開く)
茜:扉開けとく、先出て。
信也:うん、ありがと。
茜:あ、そうだ。
茜:ねぇ?信也?
茜:4月も、信也にケーキつくってあげよーか?
(エレベーターの扉が閉まる)


*** おわり。***


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