御台本

御台本 - Written by oda

外郎売現代語風*広島方言男性用バージョン
【登場人物】 【●性別】 【登場人物の概要】
(語り部) 性別不問 男性向けの広島方言で記載しています。

概要

外郎売現代語風 広島方言男性用バージョン です。
※外郎売りの要素をできるだけ残そうと努力しましたが、あきらめて広島弁で整えました。
 地理的な意味や、広島弁であることも考えつつ、原典の意味を可能な限り拾えるように考えながら書いてみました。
 フィクションとして、楽しんでいただけたら幸いです。
※雰囲気重視のノリと勢いで演じきってください。
※広島近郊の方言で記載しています。
地域によって、若干ちがいがありますがご了承ください。
近い方言の方は、自分の地域の言い方に少し変えてもOKです。
広島弁が全く分からない方の挑戦も大歓迎です!

【用語・読みの解説】
下松=くだまつ(山口県の地名)
二十里=約80キロメートル
上方=かみがた(京都方面へ)
紙屋町=かみやちょう(広島の地名)
八丁堀=はっちょうぼり(広島の地名)
銀山町=かなやまちょう(広島の地名)
稲荷橋=いなりばし(広島の地名)
狸屋菊左衛門(たぬきやきくざえもん)=創作人物名
苑西(えんさい)=創作人物名
大晦日=おおみそか
買うてもらえる=こうてもらえる
外郎=ういろう(原作どおり)
透頂香=とうちんこう(原作どおり)
宇品=うじな(広島の地名)

外郎売現代語風*広島方言男性用バージョン


ほいじゃあ、
そろそろはじめようかのぉ。
(咳払い)
ワシのお師匠さんっちゅうのは、
ここに集まっとっての人も、
知っとってんのがおってじゃろうが、
山口県の下松(くだまつ)をたって二十里上方、
広島市内の紙屋町を過ぎてから、
八丁堀をちぃと東へ行ってもらやぁわかるんじゃが、
銀山町の稲荷橋、
狸屋菊左衛門(たぬきやきくざえもん)
いまは、すっかりハゲてしもうて、
ハゲ言うたらいけんよね、
いまは、テイハツされまして、
苑西(えんさい)と名乗っちょるのがおるんです。
***
一月はお正月の朝っぱらから、
十二月は大晦日まで、
買うてもらえるこの薬、
むかーしむかし、
中国からきた、
楊寛(ようかん)っちゅうお方が、
日本へおいでんなっちゃった。
天皇さん、
当時は「帝」言うたらええかいね、
帝へ挨拶されたときの、その話。
楊寛(ようかん)さんが、この薬を、
あまりにだいじだいじにしとるわけ。
使うときには、
一粒ずつ、
頭にかぶった帽子の中から
取り出すもんじゃけぇ、
それを見られた帝様から、
「透頂香」という
名前を頂いた。
これ、
文字にしたら、
「いただく」
「すく」
「かおり」
いうて書いて、
「とうちんこう」と読むわけなんよ。
***
今じゃあ、この薬、
思った以上に広まって、
あっちに、
こっちに、
ええかげんな、
偽看板まで出とるんよ。
広島でつくっとるこの薬を、
小田原じゃぁ、
はいだわらじゃぁ、
さんだわらじゃぁ、
すみだわらじゃぁ言うてから、
わけわからんこと、
言いよるけれども、
ひらがなでから、
「ういろう」いうて
言うたんは、
ワシのお師匠、
円斎さんのだけよぅね。
***
あー、あれよ?
ここにおっての人ん中でから、
島根や鳥取のほうやら、
四国の愛媛や香川のほうへ、
湯治に行っての方とかね、
それとか、
お伊勢さんまで行く人がおっちゃったら、
あれよ?
間違っても、ちがう店へ行ったらいけんよ?
いけんけぇね?
温泉は行きんさい。
うまいもんも食べんさい。
道の駅にも寄りんさい。
じゃけどね、
この薬は、ここだけじゃけぇ、
買っときんさい、
よそではええのを売りよらんけぇ、
先に買うてから行きんさい。
広島駅から、
歩いて来るんも知れとるし、
ヒロデン乗るなら、
銀山町で降りんさい。
バスが好きなら、
とりあえず、
八丁堀か、
紙屋町って書いてあったら、
アカでも、アオでも、オレンジ色でも、
だいたい近くまで来るけぇね、
ほどよいところで降りんさい、
宇品以外は近いとこまで来るけぇね。
目印は、あれよ、
八方が八棟で、
表が三ツ棟、
玉堂づくりじゃ、思いんさい。
屋根の端には、あれよ、
帝からお許しをもろうとるって伝統の、
菊の御紋がついとるけぇね。
そのくらい、
由緒正しい、お薬なんよ。
(っていうても、これは、フィクションじゃけぇ、)
(行ってもどこにもないけぇね、)
(気をつけんさいよ。)
***
じゃけど、
自慢ばっかりしよってもあれじゃけぇ、
知らん人にはわかりゃせんしね、
言うたら、
コショウを丸飲みしたんじゃ
辛さもへったくれもないんと同じじゃし、
ぐっすり寝とって、
何が起こったかようわからんっていうのを
白川夜船言うて言うのと同じじゃし、
カープがなんでカープって言うんかも、
知らん人には、わからんことじゃし、
サンフレッチェ言うて、
名付けの意味が、
あの毛利元就と関係あるとか
言い出しよっても、
地元の人しか頷かん事じゃろうけぇ、
ひとつぶ、これを
口にいれてから、
これの効果を実際に、
見てもろうたほうが、
早いじゃろうが、そうじゃろう?
***
ほしたら、
この薬を、
一粒、ベロに乗せてから、
ごくりと飲み込みゃええんよね。
お腹におさまったら
あれよ?
ええんじゃけぇ、
この感じ。
お腹がすーーっとするんじゃけぇ。
ええ香りもするし、
口の中も、ええがいに、
すーーっとするんよね。
魚食べたり、
お肉食べたり、
キノコやら、
麺類の食い合わせ、
広島じゃったら、
海の幸も山の幸も、
なんでもあろう?
食べ過ぎてからでも
飲みゃええけぇ、
飲みんさい。
この効き目!
JTサンダースの速攻か言うくらい、
ものすごいはやいけぇ。
もはや、あれじゃけぇ、
「神っとる」ってことじゃけぇ。
***
ほうなんよ、
この薬の効能のひとつ目は、
このベロが、舌がよう回るんよ。
くるくるまわるあのコマも、
びっくりしてから、
靴履くんもわすれてからに、
裸足でさっさと逃げだすわいね、
ちぃとでも、
舌がまわりだしたら、
おおごとよ。
矢を打たれても、
盾で止めよう思うても、
もーう、無理よ。
そりゃそりゃ、そりゃそりゃ、
まわってくるけぇ。
まわってくるけぇ。
***
ア行、
ワ行、
ヤ行は、
喉を開いて鳴らす音。
サ行、
タ行、
ナ行、
ラ行は、
舌を使うて鳴らす音。
ハ行とマ行は、
唇使こうて、鳴らす音。
あかさたな、はまやらわ。
おこそとの、ほもよろを。
いきしちに、ひみいりい。
うくすつぬ、ふむゆるう。
えけせてね、へめえれえ。
***
いっぺぎへぎに、へぎほし、はじかみ。
ぼんまめ、
ぼんごめ、
ぼんごぼう。
つみたで、
つみまめ、
つみざんしょう。
しょしゃざんの、
しゃそうじょう。
こごめのなまがみ、
こごめのなまがみ、
こんこごめの、こなまがみ。
しゅすひじゅす、
しゅすしゅちん。
親も嘉兵衛、
子も嘉兵衛、
親嘉兵衛、子嘉兵衛、
子嘉兵衛、親嘉兵衛。
古栗の木の古切口。
雨合羽が番合羽か。
貴様の脚絆も皮脚絆
我等らが脚絆も皮脚絆。
尻皮袴のしっぽころびを、
三針針長にちょと縫うて、
縫うてちょとぶん出だせ。
河原撫子野石竹。
野良如来、野良如来、
三野良如来に、
六野良如来。
一寸のお小仏に
蹴躓まずきゃるな。
来るは来るは何が来る、
高野の山のおこけら小僧、
狸百匹、
箸百膳、
天目百杯、
棒八百本。
武具馬具、
ぶぐばぐ、
三みぶぐばぐ、
合わせて武具馬具、
六む武具馬具。
菊栗
きくくり、
三菊栗、
合わせて菊栗、
六菊栗。
麦塵、
むぎごみ、
三むぎごみ、
合わせてむぎごみ、
六むぎごみ。
あのなげしの長薙刀は、たが長薙刀ぞ。
向こうの胡麻がらは、
えのごまがらか、
真ごまがらか、
あれこそほんの真胡麻殻。
がらぴいがらぴい風車。
おきゃがれこぼし、
おきゃがれ小法師、
ゆんべもこぼして又こぼした。
たあぷぽぽ、
たあぷぽぽ、
ちりからちりからつったっぽ。
たっぽたっぽ
干いだこ落ちたら煮て食お、
煮ても焼いても食われぬ物は、
五徳、
鉄灸、
金熊童子に、
石熊、
石持ち、
虎熊
虎きす。
中にも東寺の羅生門には、
茨木童子がうで栗五合、
つかんでお蒸しゃる、
かの頼光の膝元去らず。
鮒、金柑、椎茸、
さだめて後段な、
そば切り、そうめん、
うどんか愚鈍な、
小新ぼち。
小棚の、小下の、
小桶に、こ味噌が、
こ有るぞ、小杓子、
こ持って、こ掬すくって、
こ寄こせ、おっと合点だ、
心得えたんぼの、
胡町(えびすちょう)、
八丁堀(はっちょうぼり)、
立町(たてまち)、
紙屋町(かみやちょう)、
原爆ドーム前、
本川町(ほんかわちょう)
十日市(とうかいち)
そのへんまでなら走って行けば、
やいとを摺りむく三里ばかりじゃ、
土橋(どばし)、
小網町(こあみちょう)、
天満町(てんまちょう)、
観音町(かんおんまち)、
西観音町(にしかんおんまち)、
福島町(ふくしまちょう)、
西広島の
7つまでなら、ヒロデンで。
そっから先も、
のんびりじゃたらヒロデンで。
国鉄乗るなら、乗り換えて。
いつ行く?
行き着く?
厳島(いつくしま)。
行くなら、
その手に、
フェリーの切符と、
「透頂香」。
有名すぎる、
満ちても浮かぶ、
大けな大けな鳥居なら、
世界遺産の厳島、
あれ、あの一面の朱(あか)を目にして、
一瞬で、
心奪われんとは言わせんよ?
老若男女の、
幼い子から、
じいさま、
ばあさまに至るまで、
その腹に納めた瞬間、
その一瞬で、
不快も奪う。
「透頂香」
だれもが、
知っちょる伝統の、
感動もたらす、
由緒正しき、
この「ういろう」の御評判、
御存知ないとは、言わんせんじゃろう?
「みやじま」言うたら、
知っとるくらい、
有名じゃろう?
そうじゃろう?
***
なんじゃ思うて立ち寄って、
わけわからんまま聞きよった、
今日この場所へ、
集まっていただきましたみなさまへ、
あげたい気持ちでいっぱいじゃけど、
言うても、こちらも商売じゃ、
売らにゃあならんと、
気合を入れて、
ご紹介したっちゅうわけなんよ。
薬の神様、
薬師如来も笑顔で守ってくだされば、
今日、買って帰ったみなさんの
お手元にも、ほら、
ご加護あれと、
願うておるばかりでございます。
さらに言うたら、
「宮島」の
3人おっての女神様、
たごりのひめみこ、
たぎつのひめみこ、
いちきしまのひめみこも、
皆さんのことを
守ってくださることでしょう。
いらっしゃいませ、
いらっしゃいませ、
今日ご紹介したこの
「ういろう」を
いまだけ、
今日だけ、
限定の、
タイムセールを
はじめるけぇね!
損はさせんけぇ、
買っていきんさい!
さぁ!
いらっしゃいませ、
いらっしゃいませ、
はい、お買い上げ、
ありがとうございます!
 
おわり

 
【あとがき】

読んでくださってありがとうございます。


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